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◎まつり場での案内放送から

6:37頃・・・忌夜祭からこの仮宮までの遷宮までのマツリバ行事について

国の重要無形文化財に指定されております神輿の先着争いが行われるまで今しばらく時間がございます。ご来場の皆様に、昨晩の忌夜祭(いみやさい)からこの仮宮までの遷宮までのマツリバ行事の一端をご紹介して参ります。

昨晩夜も更けて参りますと、神役、陸尺達がお山に登り神輿の出発を待ちます。気仙沼市唐桑よりお潮役がお祓いの潮水を持って神社へ到着。神役の一人おかち役が里の祭り準備が整ったことを告げます。

そして旧暦九月十八日から十九日にかけての真夜中、いよいよ本祭りが始まります。お鍵持ちから神官へ鍵渡しがあり、午前一時頃たきみやの禊ぎ場において御霊移しに係わる神職神役が手の切れるような冷たい水を頭からかぶり、六根清浄を唱えながら身を清めます。そして、最も重要とされる御霊移しの儀式典礼祭が人々を退けて、全ての灯りを消し暗闇の中で宮司の手によって行われます。

その後、陸尺頭に神輿を渡す神輿渡しの儀式が本宮新宮の両方で行われ、これより全ての責任は陸尺頭に渡されます。神輿を受け取った陸尺頭は、陸尺に命じお立ちとなるのですが、お立ちの時刻は虎の時刻と言われております。

新宮からの七度の??をえて陸尺頭が神輿の出発を告げます。そしてお先払いが長刀を振るい、注連縄を切り神輿の通り道を開きます。大勢の陸尺が神輿を担ぎ上げ「じょやさじょやさ」の掛け声も勇ましく、足下もおぼつかない暗闇の中をこの仮宮を目指して下山して参ります。途中、室根山の六合目「田植えの壇」で新穀献納式と言う田植えの真似事をし、来年も豊作でありますようにと祈る儀式が行われます。

三合目の石の鳥居をくぐる頃には、夜も白々と明け始めます。そこから少し下った蟻塚では荒馬先陣が神輿を迎え、蟻塚入り口では御袋神社が出迎えます。田中の社務所付近において神輿の屋根につけられた???が取られ、神輿が来たことをマツリバの観衆に知らせるため、本宮新宮の陸尺が先を争ってマツリバに届け、仮宮の屋根に飾ります。

その昔、熊野の矢田カラスが神武天皇の行幸を案内したという伝えもあり、鶏によって吉凶を占った古い習慣が生きているのです。そして、鳥居の注連縄がお先祓いの長刀によって切られると、神輿行列はここマツリバの仮宮までもみ合いながら先着を競うのです。

神輿が荒れるのは、神の力を奮い立たせ人々へのお守りを一層強くするよう願うためと言われております。今では先着を争うだけの行事となっておりますが、かつては作況を占う行事でありました。本宮が先に安着すると室根山より東側が、新宮が先に安着すると西側が豊作に、あるいは、姉の本宮より妹の新宮が早いと、その年は作が悪いなどと言われました。

先着争いが行われるようになった始まりは何時の頃かはっきりしませんが、新宮が勧請された後であろうと思われます。先着争いをしながら無事仮宮に安着すると、お仮宮を巡り舞姫による舞の奉納など、神様を慰める行事が行われます。そして仮宮での行事が終わると、神輿は静かに降ろされお山に帰るのです。

こうして祭りを終了しますが、この室根大祭は、お山の神を迎えて収穫を感謝し、共に喜び、お山へ返す行事とも言えるでしょう。室根の神様は戦の神様でもあり、豊作豊漁の神様なのです。

※現場での記録からテキスト化しましたが、聞き取れないところ等々があり、放送案内とは違う表記になっている部分
  があることをお断りいたします。


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