2016西和賀町山祗神社・長松垢離とりに戻る

location:uchinome.jpトップ>暮らしの表情>催しアラカルト2016西和賀町山祗神社・長松垢離とり>その2

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18:36 男衆がかけ足で入ってくる・・・

午後六時半頃、上の方からワッショイのかけ声が聞こえ始め、一列になって男衆が雪道を降りてきた。下帯姿に鉢巻きをしてワラジを履いていた。見学する人が思ったより少ないので、撮影場所の確保が出来て一安心。「ワッショイ ワッショイ」「ワッショイ ワッショイ」 何方かの音頭取りで整然としたかけ声が聞こえてきます。見ている観客からは、「頑張れーっ」のかけ声が飛び交い盛り上がります。

駆け足での入場 1 一斉に駆け下りてくる男衆の中に同年代のカメラマンを見つけてあ然とする。案の定、この方は頭から雪の中に突っ込んで、ビデオカメラと共に雪だらけになりました。

狭い斜面の雪道です。行列の進行を最大に妨げますのでやってはいけないことです。男衆の皆さんは、除けて走っていましたから・・。

早めに会場に入り、自分の気に入った場所を見つけて待ち受けるのがルールです。
駆け足での入場 2 駆け足での入場 3
駆け足での入場 4 駆け足での入場 5
駆け足での入場 6 先に水に入った男衆の皆さん、交わす言葉はどんなものでしょうか。氷採りをしていた係の男性は、「34名だよー」と叫んでいましたから。
駆け足での入場 7 撮影していて思ったことは、こんなに大勢の男衆が狭い区画の中に入りきれるのだろうか・・。実際に水に入っている場面でカウントしてみたら、それ程の人数には見えなかったのですが。

次々と整然と入場してきます。

18:39 垢離とり(水垢離)が始まる・・・

始まると書くと、全体の指揮者が居て一声の合図で進行すると連想しますが、全員が川に入った頃からの喚声がもの凄く、せーのっ、ワーッと言う怒号、悲鳴、絶叫に近い音声が飛び交い聞き取れなくなってしまいました。レコーダーの記録を分析すると、わーっ、わーっ、わーっが繰り返されているので、三回肩まで水に浸かり立ち上がる所作が繰り返されていると判断しました。

水垢離(垢離とり) 1 いよいよ水垢離(垢離とり)が始まります。34名ぐらいと聞いていた男衆で狭いくらいの水垢離場ですが、手を繋いで一列になると意外と整然となりました。

まだ始まらないこともあり、ふざけて目の前の男衆に水をかけている場面もありました。温かい水ならともかく、身を切るような冷水です。誰と言うことなく盛り上がり気勢が上がりました。
水垢離(垢離とり) 2 水垢離(垢離とり) 3
水垢離(垢離とり) 4 水垢離(垢離とり) 5
水垢離(垢離とり) 6 水垢離場に一気に入り丸くなって手をつなぎ、バンザイの形で肩近くまで沈みワーッと立ち上がります。

この所作を三回繰り返すのですが、耳をつんざく悲鳴に近い喚声が響き渡り、興奮のるつぼとはこのことを言うのでしょう。水垢離場の男衆全体が興奮し、凄いかけ声が響き渡ります。
水垢離(垢離とり) 7 水垢離(垢離とり) 8

水垢離(垢離とり) 9

三度目の水垢離です。ここからは大きな画面にしてみました。

整然と揃って沈み込むなんてありませんので、わーっと叫んで肩まで沈み万歳の姿で立ち上がり、またすぐ肩まで沈みます。

二番目までは区別出来ませんが、三度目ははっきり分かったので待ち構えて連射です。

水垢離(垢離とり) 10 一斉に肩まで沈んだ身体が揃って立ち上がりました。

身体から流れ落ちる水滴が、最高の迫力になりました。この場面を狙っての事です。

下見てご一緒した方がねらっていた瞬間です。

我ながらナイスショットでした。
水垢離(垢離とり) 11 同じ姿勢で居ても水滴はすぐ流れ落ちてしまいます。時間にしてほんの僅かの間のことですから・・。

実際の場面を確認しながらシャッターを切れるならば、私も素晴らしい腕前なのですが、実際はカメラの連写機能がなしえる技でした。
水垢離(垢離とり) 12 身を切る冷たさを忘れさせるほど、水垢離(垢離とり)をなしえた成就感が感じとれます。

「やったー・・」のかけ声一杯の場面です。

退場 1 18:40 水から上がり退場する・・・

水垢離が終わった男衆は、整然と元来た道を戻ります。寒さが身にしみ表情が厳しくなって居ますし、気合いを入れて自らに活を入れている男衆も見られました。
退場 2 退場 3
退場 4 退場 5
退場 6 一番最後の皆さんです。さすがに足取りが重くなり心なしか倒れそうにも見えました。

山祗神社垂れ幕と湯田スキー場

おわりに・・・

水垢離(垢離とり)の撮影のために、下見をしたりして待ち受け時間が二時間ほどありましたが、男衆が駆け足で沢に降りてきて引き上げるまで時間にして二分弱、見ている我々も夢中になってシャッター押しまくっていました。今年は見学者が極端に少ないこともあり、自分として初回にしては最高の場所で撮影できたと思いました。

撮影する前に、盛岡市のKさんに下見等でアドバイスを受けたことが意識の中にありました。・・・沈んで立ち上がる瞬間にシャッターチャンスがありますよ。たったの三回なので、あれれと言う間に繰り返されていきます・・・。私の場合ほとんどカメラ任せでしたが、始めにしては最高の瞬間が記録できたと思います。

知らなかったことですが、湯田スキー場があり夜間に営業中でした。それほどの人出がないようでしたが、照明が点灯しワイヤリフトが作動中でした。

最後になりますが、盛岡市のKさんにお礼をする前に分かれてしまい申し訳なく思っています。この場面をお借りしてお礼を申し上げます。


山祗神社・長松垢離とり・・・


長松垢離とり

1.指定しようとする無形民俗文化財の名称

  長松垢離とり(山神祭)

2.

3.指定しようとする理由

毎年旧暦の12月12日、山神さまの年取りの日に行われている行事で、大正の中頃までは部落の若者たちが素裸で神社の森の斜面を何度も転がって雪垢離をとったが、その後は川に入って水垢離をとるように変わった。垢離をとったあと神社に夜着持ち込んで夜ごもりをしたが、現在ではしていない。

この行事が何時頃から行われていたかについては、部落の始まりや生業と深く関わっているように思える。

長松は近世の始め(約380年程前)山を越えて来て住みついたとされ生業はマタギや焼き畑(かのう)であり、山神の加護のもとで厳しい生活を営んでいた。若者が垢離とり、夜ごもりという精進潔斎をして、山神を祀ったのは、困苦に耐えて厳しい父祖の業を引き継いで行くことを山神に誓う厳粛な儀式ではなかったかと思われる。

長松は、集落移転により現在地(湯之沢)に移ったが、山神に捧げるこの行事は、依然として続けられており、町無形民俗文化財に指定し、永久に後世に伝えようとするものである。

湯田町教育委員会文化財指定より

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