この舞いは、2010年1月3日に行われた岳神楽・舞初めの場で舞われた演目です。岳神楽の舞初めに訪れたのは今回が初めてのことでした。参集殿の舞台で舞われたのは十演目ほどありましたが、初めて見たのが「苧環(おだまき)」の舞いでした。恥ずかしい話しですが、苧環の舞の札が出たとき、この字が読めませんでしたし舞いの意味も分かりませんでした。側でお話をしていた花巻市の男性から、「次は苧環の舞いですね・・」と言われても分からなかった私です。
天女舞いと同じ面(?)をつけた舞手(ここからは娘と表現します)が後ろ姿で幕から出てきます。時間にして14分間程の舞いでしたが、三分程して幕から鬼の面をかぶった舞手が床を這うように出てきます。天女面をつけた娘の側に行き、いつの間にか腰に巻いてある赤い帯(かなり長い)をしっかりと手にしていました。撮影に夢中になっていたこともあり、この時の舞いの細かい所作の変化までは気がついてはいませんでした。唯一気がついたことは、幕の後ろからオオカミの遠吠えのような鳴き声(?)がしていたことでした。
家に帰り、「早池峰神楽」を開いて苧環の舞について調べてみました。うーん・・、この話に類似したお話は各地にありますね。昔の民話(伝説)として、長者の娘に夜な夜な通ってくる貴公子然とした若者があります。その正体はどこの誰やら分かりません。心配になった家人が針と糸を娘に与え、若者の着物に針を刺すように指示します。
翌朝になって娘が糸をたどっていくと、池や穴の中に入っていきます。そこには大蛇が糸に刺されている・・・と言う物語です。民話の場合は決してハッピーエンドではなく、大蛇を退治して娘が助かるという物語になります。着物に針を刺すと言うことは、大蛇のウロコに針を刺しますので死んでしまいます。
苧環の舞・・・
苧環(おだまき)とは、つむいだ麻糸を内に空にして丸くまいたもの、糸巻玉のことです。
あるところに、年頃の美しい娘がおりました。そして、いつの頃からか一人の若者と知り合い、若者は毎晩娘のところへ通うようになりました。家人が心配して娘にどこの若者かと問いますが、娘にも分かりません。母親は娘に、縫い針をつけたおだまきを手渡し、今度来たら若者に気づかれないように、若者の着物の裾に縫い針をさして、おだまきの糸を延ばしてみなさいと命じます。
朝になり若者の帰った後、娘はおだまきの糸をたぐって若者の後を追いかけます。糸はずっと山奥に続き、杉の根元の穴に入っていきます。娘は中に向かい、自分はもうあなたの子どもを身ごもっている。どうか出てきて姿を見せて欲しいと訴えます。
すると中から苦しそうな声が聞こえ、自分は本当は蛇である。おまえを好きになり夫婦の約束までしたが、お前に刺された縫い針の毒で今死ななければならない身にある。しかし、自分は決してお前を恨んだりはしていない。生まれてくる子どもをよろしくと頼む、という声を最後に姿を消す、という物語です。
三輪山伝説に基づいているようです。(※郷土文化研究会編 「早池峰神楽より」)
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