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          氷渡洞水系観察会


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昨年(18年5月)の新緑の頃、龍泉洞水源地帯観察会に参加した私です。岩手に沢山ある鍾乳洞、その直接の成因になる地下水の流れ、普通は見ることなど不可能な事です。昨年観察会に参加して色々なことを学んできました。今年も同じ観察会が実施され、氷渡洞の地底湖まで観察することを知り参加申し込みをしました。

岩泉町安家地区までは、家からおよそ3時間半ぐらいかかります。夏休み中でもあり、途中通過した龍泉洞は都会並みの混雑で、道路には「駐車場あります」の看板を持つ人まで居たくらいです。本日の参加者は、小学生の子ども達を入れて16名でした。例年と違い、この時期としては珍しいくらいの猛暑です。駐車場の木陰にいても、汗がだらだらと出るほどでした。

始めの集会で・・・Tさんから
日本洞穴研究所の主催になっていますが、龍泉洞の開発に伴って出来た研究所です。岩泉町内には洞穴が110カ所以上ありますが、その洞穴を色々な分野から研究しようと言うことで、色々な分野の先生が集まり研究されています。

今回企画している氷渡洞水系観察会ですが、氷渡洞の奥には地底湖があります。この水がどこから入り込んできてどこに湧き出すのかを、地底の流れを追って観察しましょうと言うことで今回計画しました。午前中は水が洞穴に入っていく場所を観察しますので、山の沢に入り水が消えて無くなるところを観察します。

午後からは氷渡洞の中に入ります。普通、氷渡洞の観光コースは途中までなのですが、今回のこの企画に限り探検コースからさらに奥の所、普段は一月のケービング教室が開催されますが、その時だけにしか奥に入れないのを今回は特に地底湖まで入ります。時間帯は三時間まるまるかかります。

そして抜けてきてから、川際の所に地底湖の水が湧き出しているところがあり、それを見てもらう事になります。今日の講師の先生は、洞穴研究所の理事Y先生から進めてもらいます。

Y先生から・・・
洞穴研究所の役員をやらせていただいていますが、普段は高校の理科の教師です。氷渡洞とつきあい始めて二十数年になりますが、その間生徒達と一緒に調べたり、個人的に調べたりしてしてきたことを紹介させていただきます。

氷渡洞の水は、この山を一つ越えた長内沢と言う沢です。これから行くとびっくりするかと思いますが、入口は水がありません。狭い沢です。水がしみ込む地点が数カ所あります。それを今日は少なくても二カ所、出来れば三カ所見てもらいたいなあと思います。


以下、長内沢、氷渡探検洞、龍の背本洞と順を追いながら紹介いたします。なお、説明文章の青字の部分は、講師のY先生のお話から作成してあります。



氷渡探検洞に入る場合、必ずお世話になる研修棟です。内部には貸し出すヘルメットや長靴、つなぎ服等が準備されています。2年前に入ったときお借りしたヘルメットのランプは電球でしたが、今はLEDの明るく電池の持ちの良いものに替わっていました。

安家洞から車で5分ちょっと走ったところに氷渡探検洞があります。安家川沿いの道路を西に進み、この橋を渡ると氷渡探検洞研修棟があります。


途中の崖の下で・・
石灰岩の山は南北に細長く、岩泉から久慈までおよそ60km位にわたって続いています。幅が4km位あります。安家川沿いの所では、氷渡洞が西の端、安家洞のほとんどが東の端で4kmぐらいの幅になります。これからこの沢に入ります。(※以下、青字はY先生の説明です)
必ずお世話になる氷渡探検洞研修棟です。 安家洞にかかる橋を渡り研修棟に向かいます 安家川の北側にある石灰岩の山、氷渡洞はこの岩の中にあります。


第4流入口にて・・
上の方に水が流れています。そこで消えています。下流には全然流れていません。この水は水量によってしみ込む地点が違います。100m位上下します。ここら辺の川底にフィルターのようなしみ込むところがあります。

水温と電気伝導度を測っています。電気を通す、電気伝導度が大きければ大きいほどイオンがいっぱいあると言うことが分かります。ここより下には普段水は流れていません。洪水とか雪解けの時期になりますと、水が多くなって長内沢の入口付近まで流れることがありますが、それはまれです。電気伝導度が30.4、水温が19度。これがこれから先どう変化するか見ていきたいと思います。

緑一杯の林の中で撮影するのは大変でした。画面が緑のフィルターをかけたようになり、自然の色が出ないのです。木漏れ日があり、かなり不自然ですがお許し下さい。
第4流入口 1・・分かりにくいのですが、左側に沢があります。 第4流入口 2・・すっかり干上がり水はありません 第4流入口 3・・道路脇でのY先生からの説明です。


第2流入口 1・・上流ですが流れる水がありました。光線の関係で良くは見えませんが・・。

第2流入口にて・・・
水が流れこんで来ている様子です。ここから流れ込んだ水が、ずーっと本流の川底を伝って、先ほどの第4流入口までしみ込みます。この水はカルシウムが多いので弱アルカリ性です。PHで言えば8ぐらいありますので、お肌 には一番良いのです。

ここの水温が16.3度、電気伝導度は30.5ですからほぼ同じと言う状態です。この30.4というのは、非常に高いのです。このまま飲むとお腹の調子が悪くなります。硬水の関係ですね・・。
第2流入口 2・・支流の沢から流れて来る炭酸カルシウムの多い水です 第2流入口 3・・飽和状態に近い炭酸カルシウムがここで岩の表面に沈殿します。
第2流入口 4・・沈殿した炭酸カルシウムは岩に付き白い粒々になりざらざらしていました。  ここの石は、石灰分が沈殿して表面に結晶して出来た物です。簡単に沈殿するぐらい、飽和に近い状態になっています。

温泉の湯の華に似ているのですが違います。成分が違いますので。ここら辺の植物の近くに行きますと、石灰が沈着しています。


画像でははっきりしませんが、岩石(石灰岩)の表面がざらざらしています。
第2流入口 5・・この苔状の植物は、光合成の二酸化炭素を沢水の中からとると言います。  これはですね、植物が光合成するときに二酸化炭素が必要なのですが、その二酸化炭素を水に溶けている重炭酸イオンからとるために、結晶化が進むというものです。

光合成がきっかけになって出来る堆積物のことをトゥファと呼んでいますが、現在日本で確認されている北限の場所です。ここより北では見つかっていません。

地上にありながら、光合成の二酸化炭素を水の中らとるとは驚きでした。地表にある水中植物とでも言えるのでしょうか・・。

このお話は昨年もお聞きしました。この発見は、長年研究されてきたY先生の発表によるものです。
第2流入口 6・・ここから下流も見事に水がありませんでした。 あと一つ、この水は特徴がありまして、成分を分析するとマグネシウムが多いのです。ここら辺の水系の水に比べて1.5倍ぐらい多いのです。

これをトレーサーとして、氷渡洞の最後に入る所・・地底湖・・にこの水が湧き出している事が分かりました。ここからずーっと流れていって、第4流入口でしみ込んで、それが地下をずーっと通っていって氷渡洞の一部に湧き出すと言う形です。

ここから下流も見事に水がありませんでした。


第1流入口にて・・・
第1流入口です。ここは長内沢の本流ではなくて、支流のコナラの沢と言います。本流はここから離れたところにあります。多分流れる音が聞こえると思います。(耳の調子の良くない私には、残念ですが聞こえませんでした。)

ここが吸い込み口です。本流には第10流入口、第5流入口、第2流入口と言う様に続いていて、水量によってどこで主に無くなるか変わります。今日は第10流入口はオーバーフローして、第5流入口で無くなっています。

第1流入口に向かう途中にあったドリーネですが、草でよく見えません。 第1流入口に向かう途中に、草むらの中に窪地がありました。はっきりはしないのですが、ドリーネとのことでした。春先や冬ならば、はっきりとかたちがわかりますね・・。

ドリーネ、すり鉢状の穴です。ここから水が下にしみ込みます。普段はそう言うところが見れないのですが、増水したときここで消えます。
第1流入口 1・・測定しているTさんです。 ここは水温14.1度、電気伝導度も14.1なそうです。さっきの第4の方は30ちょっとでしたので半分以下になりました。これでも沢水としては高い方です。

Y先生、上流の岩の下に手を入れて何かを探していました。何と20センチ位あったでしょうか、イワナの手づかみでした。

ここの沢で見られるイワナですが、氷渡洞の地底湖でも見ることができると言います。イワナが通れるぐらいの隙間と言いますか、水の通り道がある事になります。
第1流入口 2ここまで水があります。 第1流入口 3・・かなりの水量が勢いよく岩の割れ目に吸い込まれています。
石灰岩の割れ目にどんどん水が入り込んでいます。そして、ここからの下流には見事なくらい水がありません。

この水が氷渡洞に行くわけですが、どうして分かったかというと、例えば色を付けるとか(バスクリーンの色)・・、始めはそれでやったのですが、無毒と言いながら良くないのです。

無毒であまり気にならない物、食塩を流して電気伝導計を併用して測定します。この方法で大体5時間ぐらいで、ここから氷渡洞の地底湖まで行くことが分かりました。
第1流入口 4・・下流には水がありません。
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