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           モグラの身体検査



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こうやってみるとモグラも可愛いなと思いました。偶然ついた目の位置の土が良いのです。
モグラ・・・いつもは家の廻りの畑を掘り返し、その通路を野ネズミが走り回る嫌われ者です。周辺の畑にも、モグラ除けと称するペットボトル風車があちこちに見られます。先頃でしたが、ひょんな事から家の庭にモグラが転がっていました。もちろんですが、背中をかじられて死んでいたモグラです。

以前のことですが、家にしょちゅう姿を見せる母ネコが自分の子ネコに与えるエサでしょうか、ハンティング訓練のためでしょうか、捕まえてきたことがありました。今回も同じ母ネコで、生後四カ月ぐらいの子ネコに与えるために捕らえたと思います。

遊び疲れた子ネコからモグラを取り上げ、思いついたのがモグラの詳細観察でした。背中がかなり食いちぎられていますので、ビニールの手袋をしてマクロレンズを使用しての撮影です。こんな事でもなければ、モグラの体をじっくりと観察し撮影することは出来ません。背中の様子を撮影すると画像としてはお見せできないので、正面と後ろからの限られた範囲での撮影です。私にとっては新しい発見が数多くあり、モグラに感謝しています。撮影を終えた後、近くにあるモグラの通路を掘り返し埋めておきました。題して「モグラの身体検査と名付けて見ました。

トップの画像は、鋭い爪を持つ両手(前足)と、偶然ですが目のあるべき場所に土の粒がくつかり、愛嬌のある顔に見えています。こんな間近から見たのは始めてのことでした。


前回ですが、野良の母ネコが捕らえてきたのが2006年9月のことでした。この時は、ちびネコが三匹うろうろしていた頃で最初は何を咥えているのか分かりませんでした。よく見たら死んだモグラで、ちびネコたちの格好のオモチャと言いますか、おっかなびっくりの様子が可愛らしく撮影したことを思い出します。

この時は夜だったので、モグラの詳細を観察する気持ちが生じないままに取り上げて埋めた記憶があります。今思えば、どこにも傷がない状態できれいなモグラでした。

今回ノラネコが捕獲したモグラは、体長が14cm位ありました。


モグラ(土竜)は、トガリネズミ目・モグラ科に属する哺乳類の総称である。

形態・・・モグラはずんぐりとした胴体を持つ。とがった鼻を持ち、眼は退化して小さく視力はほとんどない。また、耳も外見からは見えない。四肢は短く、前足の掌部は平たく大きくなり、鋭い爪がある。これらは地下で穴を掘って暮らすための適応と考えられる。

また、前足は下ではなく横を向いているため、地上ではあまりうまく扱えない。全身が細かい毛で覆われ、鼻先だけが露出している。尾は短い棒状。(※ウイキペディアより)

2006年9月の画像から 1・・・何だこれはと、おそるおそる眺めている子ネコ。 2006年9月の画像から 2・・・こわごわ手を出している子ネコ。



前からの様子・・・

上半身正面と腹側からの様子です。ここでは最初に、暗闇でミミズを見つける感覚器官である鼻の様子、次には捕らえたミミズを食べる口と歯の様子、確実ではありませんが耳と思われる場所、そして、最大の武器とも言える両手(前足)の様子を調べてみました。

死んでいるとは言え、モグラにはちょっと可哀想な気持ちになりましたが勘弁してもらいます。偶然の事ですが、目があるだろうと思われる場所に小さな土粒がついていました。これが可愛い目に見えるのです。資料等で調べると、モグラには小さな目(1mm位)があり、皮下に埋まっているので発見は難しいとありました。もちろんですが、暗黒の地中で生活していますので退化して、目としての機能はないと言います。

せっかくの機会ですから土に埋める前に、ここらあたりと思う場所の毛を除けてみたりもしましたが痕跡すら分かりません。すっかり毛を剃ってやればあるいはとも思いましたが、そこまでは出来ませんでした。


モグラが地上で死んでいる例が時々見られる。「太陽に当たって死んだ」とされ、モグラは日光に当たると死ぬと言われてきたが、それは誤りである。モグラは普段地中に住み、地上はめったに出てこないため「太陽に当たって死んだ」と誤解されたのだろう。実際にはモグラはしばしば昼間でも地上に現われるが、人間が気付かないだけである。死んでいるのは、仲間との争いで地上に追い出されて餓死したものと考えられる。
腹側から見た上半身、巨大な手がモグラのシンボルでしょう。 前から見たモグラの顔、偶然ですが目の位置に土が付いていて可愛いなと思いました。

鼻の様子・・・

上半身を見ると白っぽく長い鼻が目立ちます。これを大きくするとイノシシの鼻に似てきます。鼻を裏返しにすると可愛い口が見えます。鼻の穴をマクロ撮影で最接近すると、可愛い二つの鼻の穴が見え、中には土粒が入っていました。鼻の先端部の大きさは5ミリぐらいあります。

体の上の方向から見ると、突き出ている鼻の表皮にしわのような模様がありました。モグラは聴覚と臭覚が発達していると言います。このことについてネット等で色々調べてみましたが、私には良く分かりませんでした。
鼻の様子 1 鼻の様子 2
可愛い鼻の穴。 下から見た鼻はイノシシのようです。
鼻の先端部 1・・・模様が分かります。 鼻の先端部 2

口の様子・・・

あまりにも可愛い口だったので、死んで動かないことを良いことにし、ピンセットを入れて固く閉じていた口を開いてみました。しかし、思わずぎょっとなった私です。外観とは違い、中から出てきたのは両側の長い牙でした。二本の牙の間にはきれいに揃った普通の歯が見えています。テレビの見過ぎと言われそうですが、凶暴なエイリアンの口とそっくりです。二本の牙でがっちりとくわえ込み、そして小さな歯でかみ砕くのでしょう。

所でモグラは何をエサにして食べているのでしょうか、ミミズ以外にも色々な物をエサにしている様です。ネット資料から調べてみました。

地中に棲むミミズや昆虫の幼虫を主な食物としている。モグラは非常な大食漢で、一日に体重の約四分の三の量を食べ、胃の中に12時間以上食物が無いと餓死してしまう。また、モグラはおよそ450uの範囲を縄張りにしながら、一匹だけで生活行動をしている。しかしエサが豊富な環境では、200u当たりに一匹相当が確認された例もあるそうです。

また、日本環研株式会社顧問である大塚具明さんの書かれた「モグラの生態と知恵」に驚くべき事実が書かれてありました。ここでさわりの部分をご紹介いたします。

モグラの生活の中で、一番苦労するのが地中での食餌量であります。即ち、地中の餌には制限があり食料不足ということです。しかも一日に体重の約3/4の量を食べると言われるほどの大食漢です。地上行動のできない運命から、モグラが長い歴史の中から学習を経て進化した地上動物を捕食する方法は、坑道内からの仕掛けワナ作りです。

即ち、モグラが坑道内より地上に向けた穴をあけ、落としワナを開発したのであります。これがモグラの「知恵と能力」の結晶で生まれた技術的な思想とでも言える高度なものであります。地下約20cmの地中に直径約5cm、全長約百mの坑道を作り、地上に向けて坑道内より直径2〜3cmの穴を口吻を用いてあけた仕掛けワナを数百ヶ所作るのです。続きはこちらのサイトから御覧下さい。

下から見た口の様子。鼻の穴が可愛いのです。 正面から見た鼻と口の様子。
思わずエイリアンと思った牙です。きれいな歯が揃っていました。 横から見た歯の様子。
口の側にあった耳と思われる部分(予想ですが)。 口の中を撮影しながら横から見ていたら、一カ所ですが毛のない部分がありました。もしかしたら、ここが耳なのかなと思いました。もちろん私の憶測ですが・・。

耳たぶもありませんが、モグラは250〜3500ヘルツの音に敏感に反応します。

前足の様子・・・

改めて見る手(前足)の様子に驚きました。小さなモグラの体からして、巨大で頑丈なパワーシャベル状の手でした。ノギスを使い大きさを測ってみました。体の付け根からの長さが22ミリ、手のひらの幅が18ミリ、鋭利な爪の長さが8ミリほどあります。

上段の画像は右手であり、左側が上から見た様子(手の甲)で右側が下から見た様子(手のひら)になります。下段の画像は同様に左手の様子になります。それにしても、体に不釣り合いなグローブの様な手と言うことになります。

このくらい大きな手になると、両手を地面につけての歩行は無理になり、平泳ぎのスタイルで地下のトンネルを移動することになります。畑等で見られるモグラ塚の造られる場面を見たことがありませんが、どの位の早さで進むのか興味が出てきます。

モグラの巣穴の構造・・・
巣は地下の2メートルぐらいのところにあるそうです。大きな木の根元に作られるため、めったに発見されないのだそうです。その本拠地から連絡道路を伝って本道を作っていて、これがエサ場への通り道となります。このトンネルは地下15〜40センチのところに掘られ、長さも長いものでは200〜300メートルにもなります。


さらにこの本道から地表に近い地下10〜15センチのところに、エサ場トンネルが作られているということになります。モグラ塚が見られるのもこの部分なのです。この部分を1日に何回となく往復しながらエサを捕食しているのです。

撮影していて気がつきましたが、手のひらには指紋と言うよりもうろこ状の小さな切り込みが見えます。このことについて資料を参照すると、次のように書かれてあります。

このモグラの形態は、爬虫類からやっとけものになったばかりの進化していない段階の哺乳類だということです。生きた化石と呼ばれる点は、歯形に見られる特徴で、尖っていて臼状になっていない点だそうです。また鳥類と同様に、爬虫類からの進化の名残が、手足のウロコとなって見られる点です。

モグラの形態から、進化の変化の痕跡を持っている動物とは知りませんでした。新しい発見です・・・。
逞しい右(手)の甲 逞しい右手の平、うろこ状の物が見えています。
逞しい左手の甲・・・すごい爪です。 逞しい左手の平


尻の方から見た様子・・・

あられもない姿で紹介しますが、しっぽの方から撮影してみました。可愛い棍棒のようなしっぽと、普通の足があるだけです。しっぽの下が生殖器か肛門部分だと思われます。それにしても可愛い普通の足で、長さが20ミリ、幅が8ミリほどでした。

後ろ足は単に歩くだけの物ですから下の地面を向いて体を支えています。この可愛いしっぽですが、これは体温の調節に役立っているとのことです。

モグラの赤ちゃんは、わずか1ヶ月ちょっとで巣離れをし、6ヶ月になる頃には巣を離れ単独で生活していくようです。繁殖期は年1回であり、4頭しか産まれないのですから、ネズミとは違って畑に出没する全体数はごく限られていると言えそうです。

野ネズミは1回の出産で8頭が産まれ、年に6回もの繁殖期があるといいますから、モグラさんはおとなしい動物なのですよね。
下半身の様子です。 太い棍棒状のしっぽ。
左足の下側から 1 左足の下側から 2


始めてモグラを目のあたりにし、じっくりと観察して撮影しました。発見したときは、親ネコにかじられて背中の筋肉がむき出しになっていたモグラでした。もちろんですが死んでいますので、長時間放置しておけません。ノギスを出して身体検査をしましたが、どうせならもっと詳細に調べれば良かったなと思います。

画像で見るモグラの実態は、今まで抱いていたモグラの固定概念を完全に壊すくらいの新しい発見がありました。私の家の周囲にかなりのモグラがいると思っていたのですが、実際にはそれほどではない様です。計算してみると、家の周辺にはたったの9匹位しか住めないと言うことになります。地下深いところまで縦横無尽に通路を堀り、通路の各所にわなを作り巡回してエサを捕っていると言うこと、モグラも生きていくのが大変だなあと改めて思います。

どうやらにっくきモグラでなく、愛すべきモグラという事になりそうです。次回ネコが捕まえてきたら、別の視点から掘り下げてみたいなと思います。