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           アシナガバチの羽化


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巣穴から出てきた羽化直後のアシナガバチです。

例年にない暑い夏、猛暑と言うよりも一時的には酷暑とも言える最高気温を記録した奥州市江刺でした。一時的には降雨状況も凄いことになり、その後はかんかん照りの毎日です。家の回りの草も今までにないくらい成長が早く、草刈りが追いつきませんでした。

そして、気のせいですがアシナガバチの巣作りもいつもより多かったように思います。8月中旬のことでしたが、車庫の天井付近にハチが飛んでいました。家の周囲は田畑ですから別段珍しいことではないのですが、それにしても頭の上で結構飛んでいます。もしやと思い見てびっくり、車の上50センチぐらいの所に結構大きな巣があり、働きバチがわんさといます。

慌てて殺虫剤スプレーを吹きかけて働きバチを殺し巣を撤去しました。しかし、別の場所でもハチが飛んでいます。もしやと思い確認したら他にも二ヵ所巣があり、かなりのハチが飛んでいました。ハチには罪がないのですが殺生しました。何かのきっかけで刺されてしまったら、私や家人が迷惑するので仕方ありません。

ご存知かと思いますが、大型のスズメバチに刺されると場所にもよりますが一発で命に関わることもあります。また、直接命に関わらなくても何回か刺されていると、体内にハチ毒に対して免疫システムが作られてきて、何回目かになるとショック死(アナフィラキシーショック)することがあります。例え小さなアシナガバチとは言え油断できません。


アシナガバチ・・・

アシナガバチは、スズメバチ科アシナガバチ亜科に属するハチの総称。

◎種類・・・
  26属1000種以上が知られ、日本には3属11種が生息。セグロアシナガバチ、キアシナガバチ、フタモンアシナガ
  バチがよく見られ、最近の都市部、市街地ではコアシナガバチが目立つ。

◎代表的な種類・・・
  セグロアシナガバチ、体長20〜26ミリ。体の模様は、黒の地に黄褐色の斑紋がある。北海道以外の日本全国に
  分布する。市街地でもよく見られる。
  キアシナガバチ、体長20〜26ミリで、セグロアシナガバチと並ぶ大型種。日本全国に分布する。黒の地に黄色が
  目立つ。攻撃性はアシナガバチとしては強い方である。
  フタモンアシナガバチ、体長14〜18ミリ。腹部に黄色い2つの斑があることからこう名付けられた。市街地でよく見
  られ、植物の茎や垂直な壁面等に横向きに巣を作ることが多い。

◎形態・・・
  巣を形成する女王蜂と同じスズメバチ科だけあり、アシナガバチの生態はスズメバチに似ている。幼虫の餌も昆虫
  の肉とすることなど共通点が多いが、スズメバチのような流線型ではない体型は敏捷で小回りの効いた飛翔を困難
  にしており、空中でハエなどを狩るのではなく、チョウやガの中型や小型の幼虫、つまりケムシやアオムシの類を狩
  ることが多い。

  巣の材料はほぼ同じ。構造は、スズメバチの巣は外皮があるのに対しアシナガバチはそれがない。また、多くのス
  ズメバチのように枯れ木の木部繊維や朽木ではなく、ホオナガスズメバチ属と同様に樹皮の靭皮繊維を素材とし、
  それに唾液由来のタンパク質などを混入して巣材とするので、一般のスズメバチの巣より強靭である。そのため、し
  ばしばスズメバチ類の巣は洋紙に、アシナガバチ類の巣は和紙に例えられることがある。

◎性質・・・
  性質はスズメバチに比べればおとなしく、巣を強く刺激しなければまず刺してはこない。刺傷は子供などが巣を刺激
  して起こるケースと、洗濯物等に紛れ込んでいるアシナガバチに気づかず起こるケースとがある。毒はスズメバチに
  比べれば弱いが、アナフィラキシーショックにより死亡することもあるので、過去に刺されたことがある人は注意が必
  要。また刺された時の痛さという点ではスズメバチよりも強いとも言われている。(※ウイキペディアより)



アシナガバチの巣をじっくりと見ると・・・

巣の外にいた働きバチは殺虫剤スプレーでほとんど即死しますが、巣の中にいる幼虫や羽化前のハチはしばらくの間生きています。しばらくの間と書いたのは、幼虫にエサをやる働きバチが居るからここまで成長できたのですが、エサが絶たれますのでやがて死んでしまいます。六角形の巣の中には、産み付けられた卵や、生長している各段階の幼虫、巣穴にふたをした中で成虫になるべく待機中のもの等が見られます。

せっかく駆除したハチの巣です。かごに入れてハチの巣の様子を見ていたら、駆除したハチの巣に成虫がとまっていました。動きはそれほど速くはないのですが、巣の上をもそもそと歩いています。なんとなんと、これはハチの巣から羽化して出てきたばかりの成虫でした。この機会を見逃してはアシナガバチの羽化の様子を撮影できません。

ここでは羽化寸前の幼虫と羽化直後の姿を追いかけてみました。撮影は50ミリマクロレンズとストロボを使用しほぼ等倍での記録です。かなり絞り込んではいますが、全体にピントを合わせるのは困難でした。幸いなことには、羽化直後ですから動きが遅く、飛んできて刺される心配はありません。しかし、素手で触ると刺されますのでピンセットで足をつまみ、あらかじめセットしたレンズの前にかざしての撮影です。

ハチの巣穴を塞いでいたふたを取り除いてみました。 六角形の巣に白いふたがかかっています。これの一部を開いてみました。画面中央左がその状態で、そろそろ羽化するであろうと思われる幼虫が入っていました。まだ動きはありません。

画面右端には、まるまると太った幼虫が見えています。ふたが無いと言うことは、働きバチがエサを与えて居ることを意味します。
まだ羽化には早い状態のハチの子です。 別の巣穴のふたを取り去ってみました。かなり羽化するための変態が進んでいますが、足や触覚のヒゲが未完成でした。時間をかけて羽化できる状態へと変化してきます。

資料によると、幼虫は成長すると巣穴に糸を張ってフタをします。フタをした幼虫たちは中で蛹になり、17日〜18日経つとサナギからでて羽化することになります。


アシナガバチの子育て・・・

冬を越した母バチは、4月ごろ単独で、直接日光や雨にあたらない、風当りの少ない場所を選んで巣をつくり始める。巣は六角柱状の部屋を並列して下に向けて束ねた巣板で、古い木材の繊維を集めて唾液(だえき)で練ってつくられたものである。各室に1卵ずつ卵を産み、アオムシなどをかみつぶした食物を随時与えて育てる。

初夏のころ最初の幼虫が成虫になるが、この新成虫は小形の卵巣が十分に発育していない雌で、働きバチとよばれる。働きバチが羽化し始めると、母バチは産卵と育仔(いくし)に専念するようになるが、そのころから盛夏にかけて巣は急速に大きくなる。巣の中の個体間には順位があって、母バチはつねに最上位を占め、働きバチのなかでは、一般に早期出現者が上位を占めるといわれている。

初秋には、雄バチと、翌年まで生き残る雌バチとが現れて、巣は解散する。交尾を終えた雄バチはまもなく死亡するが、雌は冬季もそれほど温度の下がらない場所を選んで越冬する。


アシナガバチの成虫が巣の中にいる幼虫に与える餌は、イモムシの肉を丸めた肉団子です。成虫はイモムシを見つけると、その場で器用に皮をむいて解体し、内臓や硬い所を取り去って肉団子にして運んで来ます。アシナガバチの存在はイモムシたちにとっては脅威で、一度見つけられたらまず逃れることはできません。

肉団子にされたイモムシは巣に運ばれますが、すぐには幼虫に与えられず、巣で待っていた他のアシナガバチに渡されて、さらに細かく柔らかくかみ砕かれて幼虫に与えられます。世話をされる幼虫は成虫から食べ物をもらうばかりではなく、口元から成虫の食べ物になる栄養価の高い液を出して成虫に与えます。この幼虫が成虫にプレゼントを与えるという行動はアシナガバチとスズメバチにしか見られないそうです。



ネット資料でアシナガバチの生態を調べると、今まで知らなかった色々な発見がありました。エサとなる昆虫類の幼虫は、作物を育てる農家にとって最大の害虫である虫達の幼虫です。そんなことを思うと、気軽にアシナガバチの巣を危ないからと駆除するのは考えものです。幼虫たちの天敵とも言えるハチの仲間ですが、人家の近くに巣を作り私達の生活の妨げにならない限り、そっとしておくのが自然の摂理にかなうなと思います。
巣穴のふたを開けてみたら、羽化寸前の状態を見つけました。六角の巣穴で中でもそもそと動いていましたが、あれれ言う間に間にはい出てきたアシナガバチです。

まだまだ弱々しくて歩くのもおぼつかないのですが、ぴかりと光るストロボに刺激されたと思います。
巣穴から出る羽化したアシナガバチ 1
巣穴から出る羽化したアシナガバチ 2 巣穴から出る羽化したアシナガバチ 3
巣穴から出る羽化したアシナガバチ 4・・・するりと抜け出してきました。 巣穴から出る羽化したアシナガバチ 5
しばらくするともそもそと動き巣の上を歩き回ります。すでに先に出てきたハチが居ますが、羽ばたいたりすることはなく、二匹とも動き回っていました。

外見上は立派なハチですが、これから時間をかけて体ががっちりとなっていきます。
巣の上にとまる羽化したばかりのアシナガバチ 1
巣の上にとまる羽化したばかりのアシナガバチ 2 巣の上にとまる羽化したばかりのアシナガバチ 3


何時間か経って見たら、巣から離れてかごの中を歩き回っていました。飛び上がる気配がまだありませんので、いろいろな角度でマクロ撮影をしてみました。

ここからの3コマは、しばらくぶりに使用したペンタックスリングストロボ使用の画像です。気に入った色調に出来なかったのですがご容赦を・・。
動き回る羽化したてのアシナガバチ 1・・・まだ可愛い表情です。
動き回る羽化したてのアシナガバチ 2 動き回る羽化したてのアシナガバチ 3・・・今にも飛び出して刺されそうな雰囲気です。
動き回っていた一匹の足をピンセットで挟み、50ミリマクロレンズの前にかざしての撮影です。画像を見ながら説明文を書いていますが、足を捕まれて「いやいや」をしている様に見えてきます。

ハチにとっても迷惑なことですよ・・。その表情がハチという怖いイメージとは違い、すごく可愛いものにみえました。
アシナガバチの顔 1
アシナガバチの顔 2・・・離せーとすねています。 アシナガバチの顔 3・・・怖いハチは思えない可愛い表情です。
アシナガバチの顔 4・・・逞しい口とあごの様子。 「いつまで押さえているのよ・・、離したら刺してやるぞ・・」そんなテレパシーが伝わってきた一コマです。

あの頑丈なあごと口で、エサとなる昆虫の幼虫(俗に言う毛虫等)をかみ砕き、口の中で肉団子状態にしてハチの子にエサを与えると言います。

最後の2コマは腹部の様子です。弱いながら尻の先端部から「針」がちろちろと出ています。それならばと何コマが撮影しましたが、針の出る瞬間は記録できませんでした。かろうじて尻の先端部に茶色の針らしきものが見えたのみでした。拡大するとそれらしく見えます。
アシナガバチの腹部 1 アシナガバチの腹部 2・・・拡大画面で針らしきものが見えます。