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浪打峠の交叉層・・・

その昔一戸から福岡へぬける浪打峠は、奥州街道を歩く人々の心身を癒す場所だったようです。現在はトンネルが開通し、一戸側からは徒歩で、二戸側からは車で峠の頂上へ行くことができます。頂上の断崖には美しい縞模様を描く交叉層があります。これは浅海に堆積した貝殻を含む砂が、波浪の流動作用によって形成されたもので、あたかも激しく打ち寄せる波浪に浸触された海辺を想わせます。 (※一戸町のHP史跡めぐりより)


地質学的に見た浪打峠・・・

資料等で調べてみると、ここ浪打峠の地層は末の松山層と呼ばれ、今から700万年前のものと言われています。峠頂上にさしかかると、山道の両側にきれいな地層が見られます。峠の頂上から見ると、東側の崖は少しだけであり、西側の崖には固い地層と柔らかい地層が窪みを付けて重なっているのが目に入ります。

何時の時代(地質学的年代)のことでしょうか・・・、地層の割れ目(切れ目)と言いますか、浸食作用により通路に適したところが生じていたと思われます。遙か昔の人々の往来に、この場所が適していたのではと思われます。何故ならば、景勝地で有名な「馬仙峡」がある馬淵川の切り立った両岸より、山を登った最短距離の場所が二戸地区と一戸地区の人々の交流に適しているからです。多くの人の往来があれば、峠付近の切り通しを拡げ通りやすい街道を造ったとも考えられます。

その後、風雨にさらされて固い岩盤地層は残りますが、比較的柔らかい地層は流れ落ちて今の形状になったと思います。

東側の崖の様子・・・

下の二コマの画像ですが、この部分はあまり固い地層ではなく平均的に削られています。ここでは全体の様子だけ紹介しますが、側に寄って見ると地層の堆積の様子がはっきりと分かります。交叉層(クロスラミナ)ははっきりと区別が出来ました。落ち葉のない時期ですと道路脇からの様子がはっきりとしますが・・。

東側の地層の様子 1 東側の地層の様子 2

西側の崖の様子・・・

東屋の前から見ると素晴らしい堆積の様子が目に入ります。比較的固い地層が浸食しないで突き出て残り、柔らかい地層が削られて凹んで見えます。道路から高い部分はきれいな模様の地層ですが、道路からすぐ上の部分には小さな土砂や白い貝の破片がびっしりとあるのが見られます。


浪打峠の地質は、第三紀中新世門の沢層とその上部末の松山層からなり、二枚貝、巻貝、腕足類等の浅海性軟体動物化石を多く含んでいる。浅い海底で新旧の堆積物が不連続に交わり地層面が交叉したもので、交差した地点から遠ざかると正常な重なり方に推移する。

交叉層という言葉は現在用いられず、クロスラミナまたは偽層と呼ばれている。一般的な層理面に斜交する縞状の葉理が見られるものであり、流動している水中で砂等が堆積する過程で生じる。

末の松山層下部の粗粒砂岩の中に顕著なクロスラミナが見られ、白い貝殻砂が層理面に沿って配列し、美しい縞模様を呈している。浪打峠では掘割となっているため、その両法面に良好な露頭が見られる。規模が大きく地質境界に生成した明瞭なクロスラミナは、全国的にも数が少なく多くの地質愛好者が訪れる。

※ 岩手の地質より

西側の地層の様子 1 西側の地層の様子 2
西側の地層の様子 3全体を右端前から見た様子です。 上の二枚画像は左右に繋がっています。砂岩の比較的固い部分が残っていて、その間の柔らかい部分が浸食されて凹んで見えています。

左の画像は、上の画像の右端から見た様子です。この白い部分に化石が沢山見られます。
西側の地層の様子 4・・・きれいな地層ですが落ち葉が邪魔でした。 峠に近い斜面にきれいな地層がありますが、地面から大量の落ち葉に覆われて表面の様子を見ることが出来ません。正直の所、落ち葉を手で除けてみたい衝動に駆られましたが、やってはいけないことです。

中央の二枚はこの斜面の上の部分で、山の上まで露出した表面がきれいに見えています。ここでも、クロスラミナが見られます。

下段の二コマは、固い砂岩の部分が突き出している様子を強調してあります。
西側の地層の様子 5 西側の地層の様子 6・・・斜面上まで拡がる地層、ここにもはっきりとクロスラミナが見られました。
西側の地層の様子 7 西側の地層の様子 8・・・固い部分が浸食されないで突き出ていました。

交叉層(クロスラミナ)・・・

クロスラミナは、もともと地層が斜めに交差する小規模な層の事で、流動している水、または空気の中で砂などが堆する際に生ずるものと言われており、特に末の松山のクロスラミナは、その規模が大きく、しかも外見が美しい事から国の指定となっています。

層は粗い砂岩で、中にはホタテ貝などの化石の砕屑物が層になって点在しており、美しい縞模様となっています。この浪打峠の地層は、末の松山層と呼ばれ、今から700万年前のものと言われています。


岩手の地層のHPによりますと、道路の両側の崖にきれいな交叉している模様があるとのことですが、落ち葉がすごくて西側の方でははっきりと分かりません。撮影したのは東側の斜面の様子で、この場所でははっきりと地層の中に見える縞模様の交叉が分かりました。

この時現地にいたのは我が家だけでしたが、途中から同年代のご夫婦が車で登ってきました。やはり眺めて写真撮影をしていました。
西側の地層の不整合面・・・中央から上と下で地層の様子が違うことが分かります。 西側斜面にある不整合面・・・

画面中央で、地層の重なりが大きく変化しています。下層のきれいな縞模様の地層が最初に水底で堆積し、その後、地殻変動で隆起し地表の水(川や海)で削られます。

その後また沈降し、その上に別の荒い土砂が堆積し今の岩石が作られています。この荒い砂岩の中に、貝の化石を細粒で見つけることが出来ます。
クロスラミナ 1 左の画像では、左上の方で地層が切れてその上にある地層に横縞模様が見えています。

下の画像では、更に接近し細かい縞模様が分かるように撮影しました。クロス(交叉)しているきれいな地層の様子が、間近で撮影出来ることを知り嬉しくなりました。
クロスラミナ 2 クロスラミナ 3・・・拡大すると縞模様の線が交叉しているのがはっきりします。


貝の化石・・・

ここ浪打峠の地層は、第三紀中新世門の沢層とその上部末の松山層からなり、二枚貝、巻貝、腕足類等の浅海性軟体動物化石を多く含んでいる。

詳細(顕微鏡等)に見れば砂岩系統の地層ですから、地層のどこでも化石等は発見できると思われます。ここでは比較的砂岩の粒の粗い部分や、表面が風化して崩れかかっている場所で探してみました。とは言っても、この場所は国指定の天然記念物ですから化石を採集したり掘り出すことは厳禁です。

ここでは、マクロレンズを使用し接写で撮影してみました。白いかけらはほとんど貝(二枚貝や巻き貝)の化石です。
化石のある地層部分 1 地層の柔らかい部分が風雨で削られ、固い貝の化石が露出しています。以下、マクロ撮影で拡大気味にして撮影してみました。

二枚貝等は薄い層状になって見えますし、破片に模様等が見られるものまでありました。具体的にどの種類になるのかは分かりません。

白い化石に、穴の開いているものがあります。これが何なのか、最高に興味がありました。
化石のある地層部分 2 化石のある地層部分 3・・・中央にある白い化石には内部に穴が開いています。これは貴重な化石だと思いますね。
化石のある地層部分 4 化石のある地層部分 5
化石のある地層部分 6 左端とその下の画像は、ウニ等(棘皮動物)の欠片のようにも見えます。

下の大きな化石は、巻き貝等でしょうか・・。かなり大きな固まりです。5センチ以上はあったと思います。
化石のある地層部分 7・・・ウニの仲間かなとも思えます。 化石のある地層部分 8・・・巻き貝の仲間でしょうか。


化石のマクロ撮影をしていたら、ファインダーの中で動くものがありました。あれれなんだろうと見ると、暖かい地層の日だまりで休んでいた(?)クモで(?)した。

しかし、体の十倍以上もある長い足を含めて撮影するのは大変です。何とか追いかけ回して撮影しましたが、正式のクモの名が分かりません。胴体についた8本(4対)の足、かなり多くの目(単眼)あるはずですが、画像からは分かりませんね。

ネット資料等で検索したら、なんと、クモではありませんでした。クモの仲間である「ザトウムシ」となっていました。座頭とはお分かりですね。歩き方が足の先でつついて歩くことから名がついたようです。

外国では、その形態から「アシナガオジサン」と呼ぶところもあるそうです。

ザトウムシ 1
ザトウムシ 2 ザトウムシ 3・・・ここまで拡大すると体の作りがはっきりとします。
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