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          葛丸渓流・たろし滝



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トップページ背景画像NO.11で紹介しましたが、花巻市石鳥谷町の奥羽山脈側から流れ出る葛丸川は、深い谷間を作り葛丸渓流として愛されています。この渓流の山腹側に、厳寒期になるとたろし(つらら)滝と呼ばれる巨大な氷柱が出現します。現場入り口にある案内板に記載されている文章を紹介いたします。

「たろし滝」・・・この地方では「つらら」のことを「たろし」と言う。冬になると、川の向こう岸にそびえる山から葛丸川に注ぐ沢水が山の中腹で凍り付き、高さ13m、太さ(周囲)数mの巨大な氷柱が出来る。これが「たろし滝」である。

この「たろし滝」の太り具合によって、その年の農作物の作柄を占う習慣があったが、昭和50年頃から、毎年2月上旬に巻き尺で測定している。「たろし滝」へは、2月上旬から3月下旬まで葛丸川にかけた橋を渡って現地に行くことが出来る。



2006年1月末の事でしたが、いつも通る道路の斜面に巨大なつららを見つけて「たろし滝」を思い出し、現地に出向いてみました。紅葉の時期以外は現地に入ったことがなかったので、厳冬期にどこまで行けるか不安でしたが、きれいに除雪され、渓流には仮設の橋が架かっていました。

頑丈な仮設の橋と、下流の様子、上流の様子です。

冬の葛丸渓流 1 冬の葛丸渓流 2 冬の葛丸渓流 3


仮設の橋を渡ったら雪の中の一本道、標高差にして100m位もあったでしょうか・・。しばらく誰も歩いた様子がないようで、ガイドロープも半分以上雪に埋まっていました。以前に歩いた人の足跡を伝って歩くしか方法がありません。完全武装をして行ったから良いようなもの、ふだんの履き物では思いっきり雪に埋まったと思いますし、滑って滑落しそうでした。

息を切らしながら歩くこと15分ぐらいでしょうか、やっと目の前に洞窟状の斜面と巨大なつららが見えてきました。
たろし滝 1 たろし滝 2 たろし滝 3


超広角レンズで撮影した氷柱の様子です。案内文には高さが13m位とありました。丁度せり出した斜面の先端から沢水が流れ出しているのでしょうか。氷柱の近くに行き耳を澄ますと、チョロ・チョロと水の流れる音がします。もちろん触れるところまでは行けそうにもありません。氷柱の周りが完全に凍結し、テカテカの氷だからです。

氷柱の出来ている場所を確認すると、北側にせり出した崖の部分は5m位あるのでしょうか。そこから落ちてきた沢水が凍結し、巨大なつららが時間をかけて作られていると思われます。根元の部分を見ても、融けて崩落した様子がありません。私が目測で見た限り、直径がおよそ1m位はあったと思われました。

新聞報道でしか見たことがなかった「たろし滝」ですが、これからどのくらい成長するのでしょうか。それとも暖かくなり融けて崩落するのでしょうか・・、全てお天気次第と言うことです。だからこそ先人達は生活の知恵で太さを測り、その年の農作物の取れ高を関連づけて占ってきたと思われます。人っ子一人いない現場で、自然の偉大な造成物を見ながら感動した一時でした。

たろし滝 4 たろし滝 5 たろし滝 6
たろし滝 7 たろし滝 8 たろし滝 9

洞窟状の窪みには無数のつららが下がっており、その下にはひょろひょろとした形の氷筍が出来ていました。私は氷筍を始めて見たのですが、高さはおよそ1m位のものが何本も出来ていたことです。しばし見とれてしまいました。この氷筍については、「葛丸渓流・氷筍」と題して別のページを作ってみました。

さて、2月11日はたろし滝氷柱の測定の日です。果たしてどこまで太く成長し、今年の占いはどうなるでしょうか。当日は150名ほどの人達が見守る中で測定され、根元付近の胴回りで5.52m(直径1.67m)ありました。私が半月ほど前に見たときは、目測で1mちょっと位でしたから15日ぐらいでかなり成長していたことになります。

この太さは、過去10年間の記録では1998年(6.3m)に続いて二番目の記録になるそうです。1978年の測定では過去最大の約8mあり、その年の出来高は大豊作だったと言います。 天気予報の技術と正確度が進んだ現在です。地元の人々に夢と期待を与えてきたこの行事が、今後も続けられることを祈ります。