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9:11 海に戻すために方向を変える・・・

引き上げただけでは海に戻せないので、クレーン台船ごと方向を変えなくてはなりません。大型クレーンが二基一体となっていますので、クレーンを回転することはできません。見ていたら、クレーン船を係留しているワイヤーを交互に引き合い、両側にぴったりとついているタグボーによって徐々に岸壁に対して位置を変化させて移動します。

最終的には、岸壁に斜めに乗っていた貨物船を岸壁と並行になるまで移動させ、クレーン船も沖合に後退して隙間を空けていました。(※クレーン船ですから自走は出来ないとのことでした)
岸壁に対して位置を変える 1
岸壁に対して位置を変える 2
岸壁に対して位置を変える 3
岸壁に対して位置を変える 4
岸壁に対して位置を変える 5
岸壁に対して位置を変える 6

9:31 下ろして着水させる・・・

引き上げた船体が岸壁とほぼ並行になると、ワイヤーが戻りゆっくりと船底が海面に近づき着水しました。それにしても船底は平らで、巨大な鍋の底とでも言えそうです。海面に降ろしたら何処まで沈むのか関心がありましたが、意外と沈まないのには驚きました。赤い喫水線までは8m程ありますが、これは荷物を積んだときのことです。拡大してみたら1m程しか沈んでいませんでした。

数年前に見た呉市の大和ミュージアムにある『戦艦大和』10分の一の実物模型(模型と言っても全長20以上ありますが)、この巨大な戦艦の船底も平らでした。大船渡に寄港する巨大客船『飛鳥U』の船底も同じなのでしょうか、興味が出てきました。

今回は引き上げ作業をするために、燃料や積み荷の金属部分を撤去して軽くしたと言いますので、ほとんど沈んでいない事になります。もっと沈み込むと思っていましたので意外でした。

これ以上ワイヤーがたるまず、船体も沈みそうもありません。ここからの作業に時間がかかりますので現場を離れました。引き上げられてからほぼ2時間ほどで、7カ月ぶりに海に戻された貨物船「ASIA SYMPHONY号」でした。しばらく見ていたら、船体の廻りにオイルフェンスが張りめぐらされていました。
降ろして着水させる 1
降ろして着水させる 2
降ろして着水させる 3
降ろして着水させる 4
降ろして着水させる 5
降ろして着水させる 6
降ろして着水させる 7

接岸・・・

無事着水したので、現場を離れ山田町大浦まで走りました。最後の勤務地での住宅が大浦地区にあり、ここで3年間生活した懐かしい場所です。

大浦からの帰りに釜石港の現場を訪れましたが、クレーン船は引き上げるために使用されたワイヤーが外され、タグボートに曳かれて沖合に向かっていました。また、7カ月ぶりに海に戻された貨物船は漏水等の点検を行い、その後は曳航されて広島県の江田島まで向かうと聞いています。
接岸しているアジアシンフォニー号全体の様子。
船首下部のバルバスバウの様子。
船首が食い込んだ防潮堤の穴から見た様子。

クレーン船について・・・

今回巨大貨物船を引き上げるために使用されたクレーン船(起重機船)について、ネットで調べてみました。兵庫県神戸市にある寄神建設株式会社のサイトからの参照です。新型起重機船「洋翔」は、2010年11月初旬ごろ竣工したとのことでした。


大型起重機船のパイオニアであると自負している当社が、さまざまなアイデアを盛り込み建造中である4,000トン吊起重機船についてその一部をご紹介いたします。

ジブの構造形式についてですが、当社従来の大型起重機船のようにジブ本体が左右2ジブ形式で4,000トンの吊能力という形式ではありません。門型形状の1ジブ形式による最大吊能力4,000トン(1,000トン×4フック)による大型起重機船です。

またジブ本体の断面形状も、最近当社で多々採用されています鋼管による鋼管トラス構造ではなく、ボックス構造つまり鋼板パネルボックス構造によるトラスジブの構造形式です。甲板上の配置は、船尾部に主巻き・起伏のウインチルームーが配置され、その上に2層構造の居住部が、さらにその上が操船および起重機部の操作室となっており、従来の船首先端部に配置する操船室と異なり、甲板上の良好な視界が確保された配置となっています。

船首部は、2階甲板上に補巻きウインチが、デッキ上には操船ウインチおよび移動可能なジブの基部が装備されています。また従来、主巻き・起伏ウインチは電動駆動が主流でしたが、本船のウインチ駆動源は全て油圧駆動となっています。共通の油圧源より各ウインチに最適な油量を供給可能となっています。

※船体・・・長さ120m、幅44m、深さ7m、定格能力4,000トン


※(寄神建設株式会社のサイトから)

曳航されるクレーン船 1
曳航されるクレーン船 2・・・それにしても巨大なクレーン船でした。このまま曳航されて神戸まで戻るのでしょうか。
11月1日のテレビ報道で、タグボートに曳かれて広島に向かう大型貨物船アジアシンフォニー号の出航の様子が紹介されていました。大型貨物船は自走できませんので曳航され、一週間ほど掛けて広島県の造船所まで行き、修理された後に売却されるとのことでした。

現場で見ていた地元の男性が、『この船が撤去されたことで釜石漁協の岸壁が修理され、漁業が再開されると良いのですが・・』と感慨深そうに話しておられたのが印象に残りました。地元の皆さんも同じ心境だったと思われます。

現場でお会いした方のお話しにもありましたが、釜石埠頭の方向に新しく漁協の設備を設置する予定だと言います。一日も早い漁業の町釜石が復活することを願っています。
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