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       板沢しし踊り・浪合(しし酒盛り)


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酒盛り前座の絡み合いから
板沢しし踊り・・・

遠野市上郷地区に伝えられるしし踊りです。最初に見たのが、六神石神社例大祭の時でした。神社神殿前と境内での奉納される舞を見ていましたが、江刺のしし踊りとは違い、刀を持った女性が厳つい表情のししの前で踊るのに驚きました。そして、ししの体にまとっている薄いカンナガラが飛び散る様子を見るのも初めでのことでした。

ここでは、購入した「遠野郷しし踊り大図鑑」を参考にし、簡単に板沢しし踊りについて紹介いたします。


掛川のしし踊りを移入し確実に芸能を伝承する・・・

旧上郷村の與五兵衛家の四代目、菊池田子助(1807〜1882)が創始者とされている。庭師であった田子助が、旅先の遠州掛川で当地の踊りに感動し、故郷への土産として習い伝えた。その後、しし踊りは、南部藩主の認めるところとなり、南部家の旧家紋(裏紋)である「九曜」紋の使用を許され、分家に対しては「向かい鶴」紋を与えて区別している。

江戸後期には、盛岡南部藩の橋の渡り初めに踊ったと記録があり、それ以前から踊られていたことは確実である。その後も、明治、大正、昭和と上演記録があり、一時的な中断はあったようだが地域の代表的な芸能として伝わってきた。昭和52年に板沢しし踊り保存会をせつりつ。平成18年に韓国「国際仮面舞フェスティバル2006」へ出演、平成19年遠野市無形民俗文化財に指定された。


しし踊り役割について・・・

今まで何気なく見ていたしし踊りですが、解説書を見て正式な役割分担の内容を初めて知りました。解説書から紹介しておきます。

しし以外の演者が多いのも、遠野郷の「しし踊り」の特筆すべきポイントだ。

◎種ふくべ・・・隊列のリーダーであり、派手な着物に大きな瓢箪を身につけている。全体のペース配分や細かい調整
  などをコントロールする。手にふくべ(瓢箪)を持ち、腰に大きな瓢箪をぶら下げている。

◎ふくべ・・・向こう鉢巻きに、黒エリの上着と黒か紺のモモヒキ。腰帯を二本つけ、黒足袋に切緒のワラジを履いてい
  る。足に鈴をつけ、手にはふくべを持つ。幼児から小学校の低学年が受け持つ。

◎中たいこ・・・振り袖の着物、袴、腰帯、黒足袋、切緒のワラジ。向こう鉢巻きに紅白二本の片タスキ。紅白の紙、フ
  サ、鈴をつけた「フリキ」を両手に持つ。小学校高学年が受け持つ。

◎刀かけ・・・振り袖の着物、袴、腰帯、紅白二本のタスキをかける。黒足袋、切緒のワラジ。向こう鉢巻きをし、腰に
  は刀、手には扇を持っている。中学生から高校生ぐらいが演じる。

◎たいこ・・・ハンテンに黒か紺のモモヒキ、太めの帯に紺のキャハン、黒足袋。頭には向こう鉢巻き、足には切緒の
  ワラジを履く。ししに何かあったときに代役が出来るように同じ格好をしている。

◎ふえ・・・ハンテンに黒か紺のモモヒキ、太めの帯に紺のキャハン、黒足袋。頭には向こう鉢巻、足には切緒のワラ
  ジを履く。

◎しし・・・ハンテンに黒か紺のモモヒキ、太めの帯に紺のキャハン、黒足袋。頭には手ぬぐいを巻き、足には切緒の
  ワラジを履く。その格好の上から、腰ざらしを付け、大きなタテモノとカンナガラのついたしし頭をかぶあり、幕を垂ら
  す。ししの先頭は「中立」と呼ばれ、一番踊りのうまい人のポジション。たいこのすぐ後ろにおりししは「前しがり」と呼
  ばれ、次期「中立」候補である。

◎カンナガラ・・・ドロノキ(柳科の落葉樹)を削って作られる。カンナガラは薄ければ薄いほどよい。軽く、踊りやすいだ
  けではなく、風にも優雅に反応し、舞ったときに見栄えがする。カンナガラを作るには手引きでカンナをかけるのが
  一番だが、近頃は機械引きが主流だ。しし一匹に必要なカンナガラは1000〜1400本。

※遠野郷しし踊り大図鑑より


浪合(しし酒盛り)・・・

タイトルの画面は、50年ぶりに復活されたという「浪合(しし酒盛り)」の場面です。中央に置かれたお膳を前にして、種ふくべとししが酒によって舞い踊る様子だと言います(資料から)。

浪合の場面は午前と午後の二回ありましたが、ここでは午前部の様子を紹介いたします。とは言うものの、ストーリー等が一切分かりませんので、舞っているししの様子から私なりに分類して構成してみました。午前と午後の舞の違いは、観客から酒盛りに参加する方が女性の方と男性の方と入れ替わることでした。(※午前の部は女性の方であり、午後の部は会場にお出でになった遠野市長さんでした。)

最初にも説明しましたが、撮影場所の光線状態の変化がありすぎて画像処理が大変です。場面によっては明暗の差があり過ぎますが、あくまでも演じている方を中心にしてあります。


『遠野物語』119話にある文章から・・・

遠野郷の獅子踊りに古くより用ゐたる歌の曲あり。村により人によりて少しづづの相違あれど、自分の聞きたるは次の如し。百年あまり以前の筆写なり。

浪合

此庭に歌の上ずはありと聞く、歌へながらも心はづかし
おんげんべりこおらいべり、山と花ござ是の御庭へさららすかれ
○雲繝縁、高麗縁なり
まぎゑの台に玉のさかすきよりすゑて、是の御庭へ直し置く
十七はちやうすひやけ御手にもぢをすやく廻や御庭かかやく
この御酒一つ引受たもるなら、命長くじめうさかよる
さかなには鯛もすずきもござれ共、おどにきこいしからのかるうめ
正ぢ申や限なし、一礼申で立や友たつ、京

太鼓を叩きながら、このような歌をうたっているのでしょうが私には分かりませんでした。


入場の様子・・・

旗持ちを先頭に皆さんが登場します。「旗持ち」の後ろは「種ふくべ」、ちび子達の「ふくべ」と続いてきます。ちびっ子達は可愛らしい仕草で周囲に手を振りながら入ってきました。

入場の様子 1・・・板沢しし踊り保存会の旗を先頭に入ってきました。
入場の様子 2・・・ふくべの最年少の女の子、思わず可愛いーの声が出ました。 入場の様子 3・・・ふくべの皆さん。
刀かけのみなさん・・・

解説書によると、舞っているのは中高生の女性であり、右手に扇を持ち軽快な動きで舞っていました。テンポが速く動作の大きい舞です。

この場では刀を持ちませんが、獅子の前に立って舞うときは、右手に刀を持って舞います。

刀かけのみなさん 1・・・右手に扇を持っての舞。
刀かけのみなさん 2・・・足の振り上げがすごいなと思いました。 刀かけのみなさん 3・・・勢いよく回転しています。
ししの登場・・・

種ふくべを先頭にししが踊りながら入ってきます。目の前で、「どうだ・・」という感じでポーズが決まります。しし頭に付けているカンナガラが、ばさばさという音とともに揺れ動き足下に落ちてきます。

先頭に入ってきたししの頭には「大神宮」の文字が書かれてあります。解説でも書きましたが、先頭のししはリーダー的役割の「仲立」です。
ししの登場 1・・・先導役が種ふくべで、その後にししが続きます。
ししの登場 2・・・幕の中にいる方の仕草が分かります。 ししの登場 3・・・ほとんど目の前の演技でした。

種ふくべとししの絡み合い・・・

適切な表現が浮かばなかったので、勝手に絡み合いと書いてみました。ガイド資料によると、種ふくべとしし(中立)が一対一での酒に酔った状態での絡み合いを表現します。

種ふくべがししを誘い出す仕草で舞い踊ります。
絡み合いの様子 1
絡み合いの様子 2 絡み合いの様子 3
広場中央には座卓が置かれ、酒瓶と徳利、大杯と魚が置かれてあります。互いに向かい合った位置に座り、種ふくべが手にしたふくべを振りかざしししを挑発します。

すっかり酔っぱらったような仕草で舞いますが、両者とも思い思いに動き愉快な場面を表現していました。
絡み合いの様子 4
絡み合いの様子 5 絡み合いの様子 6
絡み合いの様子 7・・・右手に持っているのがふくべです
絡み合いの様子 8 種ふくべがしし(仲立)の前に出て、手にしたふくべ振りながらししを誘導しています。
舞を盛り上げるたいことふえのみなさん。 舞台北側にはたいこ、ふえの方が演技に景気をつけています。たいこは年輩の男性だけですが、ふえは女性の方も半数ぐらいおります。たいこは7人、ふえは8人だと思いました。
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