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胎内くぐりと頭かじり・・・

神田より子氏の書かれた文献「早池峰山伏神楽」によると、権現様は幼児の頭をかじったり、衣装をかんで健康祈願をする。また、権現様の幕の下をくぐって息災延命を願う「胎内くぐり」を行う。胎内くぐりをすることで、生まれ清まりを果たしうると言う修験思想が、権現舞信仰の中に読み取れる・・・以下省略。

郷土文化研究会編による「早池峰神楽」の解説によると、幼児、年男、老人は頭をかんでもらうと災難・病魔を退散できるとされている。また、胴の下を、赤ん坊を抱いたり、幼児の手を引いたりして母親がくぐり、子ども達の無事成長を祈る、「胎内くぐり」と言うのも行います。

昨年の宮古市黒森神楽例大祭の時、頭かじりを偶然でしたがしてもらいましたが厳粛な気持ちになりました。ここでは最初にご老人の方の胎内くぐりと頭かじりの様子を紹介し、次には中高年の方や幼児の胎内くぐりと頭かじりの様子を紹介します。

胎内くぐりの場面を見ると、別当の方が先頭の方の手を引いて権現様の衣の下を通り抜けています。自分勝手に歩いてはいけないようです。胎内をくぐりの説明にありましたが、手を引いてもらってくぐるところに意味がありそうです。また、頭かじりの時も祈りに似た厳粛な場面であり、頭の上の大きな獅子頭が威厳あふれるように見えています。
お年寄りの胎内くぐり 1 お年寄りの胎内くぐり 2・・・別当さんにしっかりと手を引かれます。
頭かじり 1 頭かじり 2・・・権現様まが近づきます。

中高年、幼児の皆さん・・・

ここでも同様に、別当の方に体を支えられて高く上げられた衣の下をくぐり抜けます。

3コマ目をよく見ると、権現様をかぶった舞手が体を大きく回し、衣の端(剣がついています)をしっかりと引いて高く掲げます。

それから二回目の胎内くぐりが始まります。母親に抱かれた幼児、父親に抱かれた新生児を意図的に組み合わせてみました。

中高年、幼児の方々の胎内くぐり 1
中高年、幼児の方々の胎内くぐり 2 中高年、幼児の方々の胎内くぐり 3
中高年、幼児の方々の胎内くぐり 4 中高年、幼児の方々の胎内くぐり 5・・・乳児の方が母親と一緒にくぐります。
中高年、幼児の方々の胎内くぐり 6・・・赤ちゃんが父親に抱かれてくぐります。 最後になりますが、赤ちゃんを抱いた父親がくぐります。丈夫な子どもに育って欲しいという願いからです。

頭かじりのアップ画像です。実際に口を開けて頭をかじるのではなく、側まで権現様を近づけています。厳粛な雰囲気と言いますか、会場内はシーンとなっていました。

幼児の場合は恐怖感から泣き出すはずですが、この時は泣きませんでした。
中高年の方々の頭かじり 1 中高年の方々の頭かじり 2
中高年の方々の頭かじり 3 乳児と母親の頭かじり


清めの場面・・・

別当の方が水桶と柄杓を携えて権現様の前に立ち、恭しく拝し水桶を捧げます。


本来ですと、一連の流れの中で権現様が口に柄杓をくわえ、竈や炉に水をかけて火伏せをすることになります。今回は、権現様が柄杓をくわえる場面がありませんでした。

清めの場面と名付けたのは、四方に水をかけて祓う場面を見たからで、適切かどうかは分かりません。
清めの場面 1
清めの場面 2 清めの場面 3
今まで直立していた権現様は中腰になり、後ろにいる舞手の方が裾を大きく拡げ、権現様が中央に位置するようになります。

直立し見下ろす権現様も迫力がありますが、衣の中央に位置する場面は目の前にあることから、迫力と威圧感が出てきます。
清めの場面 4
清めの場面 5・・・衣をぱーっと拡げると存在が大きくなります。 清めの場面 6・・・後ろの方が両手を入れて高く掲げています。

別当の方が水桶を持って歩くと、その後ろに衣を拡げた権現様が続いて歩きます。最初に、太鼓と鉦の座る場所に水をまき清めます。続いて結界の四隅に水をまいて清め、最後は中央に位置して水をまきます。

別当の「I さん」は岳神楽の解説等の場面では、にこやかな表情とウイットに富んだ話し方をなさる方ですが、水をまくときの表情は厳しさが伺えます。

清めの場面 7
清めの場面 8 清めの場面 9

清めの場面 10

権現様、清めの最後の表情です。大きな口を開けていますが、下あごの上に白いもの見えています。何だろうなと思い画像を拡大したら、白い綱でした。何に使うのか分かりませんが・・。


舞の終わり・・・

今までは気をつけて撮影しなかった部分です。するりと衣から抜ける舞手の「Oさん」です。

舞が始まってから17分ほどですが、激しい動きと衣の中で権現様を左手で高く掲げての演技です。熟練技とはいえ疲れるだろうなあと思いました。

また、脇役(尾についた剣を持つ)としての舞手の方も、Oさんの動きと呼吸がぴったりあっており凄いなあと思いました。
舞の終わり 1
舞の終わり 2・・・衣からするりと抜けます。 舞の終わり 3・・・権現様に目を合わせます。
舞の終わり 4・・・深々と礼をして終わります。 舞の終わり 5


今回のお気に入り画像で、Oさんの目線の厳しさに惹かれます。
今回のお気に入り画像です・・、と言うよりもこの場面を撮影したくて舞初めに出かけてきたのが本音です。神楽の舞と言いますと、それぞれの舞は神話を題材としていますので、舞を観てその内容を理解するが大変だと私は思っていました。今にして思うに、つい五年ほど前までは撮影するなんて思ったこともありませんでした。

ですから、神楽の場面を撮影しても、参考になる解説資料等がないと説明の記事が書かれません。舞初めで撮影した権現舞の場合、解説記事等は最小限にして感じことや自分の想い等について記してあります。以前の記事でも紹介しましたが、我が家にも伝来の権現様(獅子頭)ありますし、集落の会館にも権現様が置かれてあります。

純農村である私の住む集落では、年に一回、一同が集落会館に集まり、悪魔払い、家内安全、火災予防、五穀豊穣と先祖供養をしています。歴史をひもとくと、集落の権現舞は発祥を早池峰神楽・大償神楽弟子神楽である土沢神楽から伝授された佐野向神楽に繋がっていくようです。

当地区では佐野向神楽を師匠とし、7地区に伝承されています。秋の芸能祭りでは、地域内の8団体が創作した権現舞群舞が披露されています。威厳と畏怖感に満ちた権現様ですが、地域の集落内に愛される存在でもあります。
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