山の神舞(クヅシ)・・・
山の神の由来を語り、歳の豊作を祈って各様の四方鎮めを行い、太刀を採って悪魔をはらう、託宣、弊打ちと変化に富んだ豪壮な舞が山の神舞です。
山の神とは、大山祗命のことで、春は里に降って農業の神様となり、秋には山へ帰って山守る神様で、農家や山仕事をする人々にとっては絶対的な存在です。山(サン)は産(サン)に通じることから婦人の信仰も深いようです。
12月12日はこの神様のお年越しの日で、農家では餅をついて休みます。山稼ぎの人達や大工、屋根葺きの人達は事にこの日を重んじ、この日は山へ行かず、鉈なども使いません。米の粉の団子を十二個なまのまま神棚に供えたり、部落の人達が集まり、御神酒上げをしたりするところもあります。春の山仕事始めにも同じような祭りをします。
舞手は六三の九字を切り、不動神印を結んで厄を祓い鎮めます。大償神楽では山の神面は口を開けた「阿」形、岳神楽では口を閉じた「吽」形の面を用います。(※早池峰神楽鑑賞ガイド、早池峰神楽参照)
山の神舞は神楽の定番なのでしょうか、今まで撮影してきた会場では必ずと言うほど舞われていました。最初は面を付けての舞になり、お盆にのせた米を掲げて舞い、次にはお菓子などを会場に振りまきます。今回は全体の舞で27分ほどあり、面を外したクヅシの場面は12分ほどありました。
山の神舞を舞われた方は大ベテランの方でもあり、権現舞では四方固めの役をしていました。また、御花御礼の口上も笑顔たっぷりで述べておられました。以前のことになりますが、別の会場で観た舞で使う太刀について説明された事が今でも残っています。・・岳神楽で使う刀はすべて真剣です。気をつけないと振り回したとき大怪我をします・・。舞で真剣を抜くときは鞘と刀を麻糸でむんであるのをほどきますが、ただ持っているときに抜けないようにしているのだなあと思いました。
実際に舞うときは、頭から「ザイ」と言う髪の毛のようなものが垂れていますのではっきりとした表情は伺えません。最初は右手に太刀、左手に鈴木(木の棒の先に麻糸の房と鈴がついたもの)を持って舞い、次には右手に扇や鈴木、左手に幣束を持って舞います。ときには飛び上がったりもしますので、決まった瞬間には会場からかけ声が飛び交います。
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