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    2009宮古市黒森神社例大祭・湯立託宣


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法印の前で九字の印契を結ぶ神子、厳しい表情に惹かれます。

私にとっておなじみの黒森神楽発祥地の神社ですが、例大祭を見るのは初めてのことです。最大の関心事が、神子による厳粛な儀式の「湯立託宣」でした。うっそうと繁る杉の古木の中にある境内です。雨降りとあって、会場は高いところからブルーシートが掛けられ薄暗い状態でした。

神社拝殿前での神事が終わり、一段下がった境内に置かれた白紙の長い注連(しめ)を廻した中にある釜でお湯が沸かされ、その前に神子と法印(神官)が座ります。その後ろに黒森神楽の皆さんが座り、太鼓、笛、手平鉦の奏でる楽の中で厳粛な儀式が始まりました。

初めて見る私には、儀式の意味も良く分かりません。五十分ほどの儀式の流れを追いながら、変化のあるところを中心にして撮影しました。5m位の距離からストロボがひっきりなしに光るので、舞っている神子と目線が合うことがしばしばありました。その都度ぎくりとなりながら撮影したのですが、迷惑だろうなと思いつつも撮影は中止できません。当然のことですが、儀式が始まる前に撮影しても良いですよと承諾を頂いてのことです。

予想に反して神子さんが若い女性だったので驚きました。側にいた知人のKさんから、師匠について修行した方とお聞きし、すごいなあと思いました。

このページを構成するにあたり、撮影した画像を整理し、法印と神子の見せた所作の変化を追いながら、資料と対比して私なりに構成してみました。

解説文作成については宮古市刊行 陸中沿岸地方の廻り神楽 報告書参照と敬和学園大教授神田より子氏のネ
  ット資料「神子舞と湯立託宣の実際」を参照させていただきました。なお、良く理解しないままでの内容紹介があると
  思われますがご容赦下さい。

※トップの画像は、神子が法印から二つの笹束を受け取る前に「臨・兵・闘・者・皆・陳・烈・在・前」と唱え、指を折り曲
  げて印契を結ぶ場面です。私には初めて見る場面なので、指の形がどれを指すのかは分かりません。



始まる前の境内の様子・・・

神社境内に入った時、すでに釜が置かれて火が入り湯気が出始めていました。湯立儀式が始まる少し前に御幣のついた笹竹四本が立てられ、その後に結界を張り巡らす白紙の長い注連(しめ)が張られます。
釜の前には、儀式で使用する笹竹に御幣のついたものや、三宝に米が入ったもの、お盆に塩を入れたものが置かれてあります。神子は使用する長い数珠を出していました。

これらの準備は神楽衆の皆さんがやっていました。あいにくの雨降りですが、大きなシートを張り巡らし雨の心配はありません。地面にはシートと畳が敷かれ、神楽衆が後ろに控えていました。私も含めて観客は、畳の周囲に置かれた椅子に座るか立ったままで見ることになります。


湯立(ゆだて)・・・

神前の大釜(おおがま)に湯を沸かして神意を問い、笹を降りつつ湯を廻りに振りかける清め払いの行事。「ゆたて・ゆだち」とも言う。古代には「盟神探湯(くかたち)」と言う行事があり、神前で沸かした熱湯を手で探らせ、真偽正邪判断を行った。中世には「湯起請(ゆぎしょう)」とよばれる一種の神判があり、盗みなどの実否を正すために熱湯に手を入れて判定した。湯立を問湯(といゆ)とよぶ所もあるように、神意を問う方式でであったことを示す。
※YAHOO百科事典より

湯釜に火が入り湯が沸かされます。 釜の周囲に笹竹が四本立てられます。
竹に白紙の長い注連がはられます。 湯釜の前では神子が長い数珠を足していました。儀式で使用される笹竹や御幣、米、塩が置かれてありました。


湯立託宣が始まる・・・

午前10時半、湯立託宣が始まりました。青い狩衣と袴に烏帽子姿の法印と、緋袴に孔雀を描いた千早を着た神子が釜の前に並んですわり、後方には胴取を中心に左右に鐘や笛を奏する神楽衆がひかえています。

法印が「祓い詞」、「大祓い詞」を唱え、神子は珠数をもんで、「大祓い詞」の時は唱和する。神楽衆は「打ち鳴らし」の楽を奏し、「座揃い」の歌がうたわれる。
(※神田より子氏のネット資料から)

祓い祝詞 1・・・法印と神子の後ろには神楽衆が座り、笛・太鼓・手平鉦がならされます。 祓い祝詞 2
祓い祝詞 3 祓い祝詞 4

神降ろし行事・・・

神降ろし行事である。法印は塩の入った三宝をとり、釜の方向に向って塩をまく。次に神子も同様にまく。

法印と神子の前には、米が入った三宝と塩が入ったお盆が置かれてあります。最初に法印が座ったままで釜に塩をまき、その後、神子がお盆をもって立ったままで塩をまきます。
湯釜と清める 1 湯釜と清める 2
湯釜と清める 3 湯釜と清める 1
湯釜と清める 5 湯釜と清める 6
湯釜と清める 7 湯釜と清める 8

太鼓が小きざみに打たれ、法印は「湯立祝詞」を喝える。神子はこの間珠数をもんでいる。

最初に法印は座ったままで祝詞を読み上げていますが、その後立ち上がって釜の前に行き祝詞を読み上げます。撮影した画像には、立ち上がった時には手にした祝詞が違うもののように見えました。この間、神子は数珠をもみながらひれ伏していることが多かったように思います。
湯立祝詞 1 湯立祝詞 2
湯立祝詞 3 湯立祝詞 4

祝詞が終わると剣者幣を手にして、御幣のつかない柄のほうで湯釜の四方に張り巡らしている注連(しめ)を切り裂いていきます。

剣者幣・・・
剣者幣は神歌にもあるように、悪魔を妨げる象徴であり、釜の廻りの注連(しめ)を切る刃とも見なされている。
剣者幣で注連(しめ)を切る 1 剣者幣注連(しめ)を切る 2
剣者幣で注連(しめ)を切る 3 剣者幣で注連(しめ)を切る 4
剣者幣で注連(しめ)を切る 5 剣者幣で注連(しめ)を切る 6

剣者幣で釜の湯をかきまわしながら「大道神祇の文」を唱えて、様々の祈願をする。

この所作の流れは私には良く分かりません。最初に御幣の部分が釜に入れられ、続いて柄の部分で釜の湯をかき回します。神子は数珠をもんでいましたが、最後には数珠を抱いて体を折り曲げていました。この姿はもの凄く神聖なものに見えました。
剣者幣で湯釜をかき回す 1・・・最初に誤配を湯にかざします。 剣者幣で湯釜をかき回す 2
剣者幣で湯釜をかき回す 3・・・柄の部分で湯をかき混ぜます。 剣者幣で湯釜をかき回す 4
剣者幣で湯釜をかき回す 5・・・法印がかき回している間、体を大きく折り曲げています。 剣者幣で湯釜をかき回す 6

次に法印は二束の笹をとり、釜の中の湯に浸して周囲に振りかける。

法印は両手で二束の笹竹を手にし湯釜の上にかざします。次に右手で二束の笹竹を持ち、湯釜に入れてかき回します。両手に持ち替えて湯釜から笹竹を取り出し、笹竹を振り湯を周囲に振りかけています。この間、神子は何もせずにじーっと見ていました。
二束の笹竹で湯をかき回す 1 剣者幣で湯釜をかき回す 2
剣者幣で湯釜をかき回す 3 剣者幣で湯釜をかき回す 4
釜湯に浸した笹竹で周囲に湯を振りかける・・・ 1 釜湯に浸した笹竹で周囲に湯を振りかける・・・ 2

法印は釜に向って拝し、神子と向いあってすわる。神子は「臨・兵・闘・者・皆・陳・烈・在・前」と唱えて、印契を九回結び、刀印を結んで縦横に九回九字を切って笹を受けとる。

両手に笹竹を手にした法印は、湯釜の正面で神子と対面して座ります。最初に神子の正面で大きく笹竹を八の字に掲げ、その後笹竹を胸の位置まで下げます。最初は法印の後ろで撮影していましたが、神子の姿が見えないので斜め後ろに移動し神子の所作と表情を捉えてみました。

現場には私以外にも撮影する方がおり、ビデオを撮影する方は湯釜の側まで行きました。もしかすると地元報道関係の方かなと思いますが、これは厳粛な現場の雰囲気を壊すことになります。

テレビの時代劇の場面で見る九字の印契ですが、目の当たりで見ながら撮影したのですが良く分かりません。画像整理しながら五場面にまとめてみました。神子の印契を結ぶ手の動きと表情は見せ場の一つだと思いますが、知識がなければ指の組み合わせの意味が分かりません。

終わったところで法印から神子へ笹竹を渡され、次は神子舞と託宣へと続きます。

神子の前で法印が笹竹を八の字にかざします。 法印の前で神子が九字の印契を結ぶ 1 
法印の前で神子が九字の印契を結ぶ 2  法印の前で神子が九字の印契を結ぶ 3 
法印の前で神子が九字の印契を結ぶ 4  法印の前で神子が九字の印契を結ぶ 5 
法印の前で神子が九字の印契を結ぶ 6  法印から笹竹を受け取る。
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