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権現様を手にしての舞・・・

続いて権現様を手にしての舞になります。権現様の正面で手を合わせた後、左手を衣の中から権現様の中に入れて高く持ち上げます。舞い手はくるりと体を衣の中に入れます。その後、「カタカタ」と歯打ちの音が響きます。

この場では稲瀬自治会組織の代表五団体の熱演が繰り広げられますが、見ていると一つの太鼓の合図で舞われるはずなのに、微妙に所作が違ってきます。

権現舞 1

下舞のTさん、権現舞のTさんのお二人は、私が知っている限り集落の権現舞で続けてこられた方々です。

権現様を手にし舞い続ける緊張した様子のTさん、気合いが入り一気に衣をかぶり直立します。

直立した姿勢からあげものほめが始まります。ここからの解説は早池峰神楽(岳神楽)からの引用になります。

権現舞 2 権現舞 3
権現舞 4 権現舞 5
権現舞 6

あげものほめ・・・

権現様を高く掲げた状態になると、あたかも上から権現様が見下ろす迫力のある場面になります。衣の中にいる舞い手は左手で高く権現様を持ち上げ、右手は下あごの部分におかれます。

右手を動かすことにより、上下の歯がぶつかり合い「カタカタ・カタカタ」と迫力とリズム感のある音が聞こえてきます。

権現舞 7 供えられた五穀は米、御酒などのあげものを讃め、豊穣を祈願します。
権現舞 8 最初にお米ですが、目の前で上からぱらぱらと落とし、次にはおkっぷに入ったお酒が上げられます。

最後は一升瓶のままですから大酒飲みの権現様です。
権現舞 9 権現舞 10
権現舞 11 権現舞 12
権現舞 13 権現舞を各所で見ていて、良く分からないのがこの綱のあげものです。岳の早池峰神楽では、麻縄の束が上げられたのを記憶しています。麻縄束は今となると最高の貴重品ですが、昔はごく普通にどこにもあったものです。

大きな口にがっちりと紐を咥え力強く舞います。
権現舞 14 権現舞 15
権現舞 16 権現舞 17
権現舞 18 胴元の方の拝礼があり、胴元に続いてぐるりと歩きます。これで一連の舞は終わりになります。時間にして13分間の熱演になりました。

私が見ている限り、この下舞や権現様の舞い手の役割はかなり長い間続いているように思います。次世代の後継者を育てないと大変なことになります。
権現舞 19 権現舞 20
権現舞 21 舞が終了すると、下舞の方が重い権現様を持ち上げて外します。
権現舞 22 下舞のTさん、権現舞のTさんのお二人は、私が知っている限り集落の権現舞で続けてこられた方々です。

祭壇に深々と拝礼を終了します。ご苦労様でした。

権現様が直立しているように見えていますが、下舞の係の方が持ち上げていた時に撮影しました。
権現舞 23 権現舞 24


権現様(獅子頭)・・・

権現様(獅子頭)の三態です。斜め横から、口を大きく開けた状態、正面からの表情の三態です。飾っておいた権現様を掃除する際に撮影してみました。こんな事、自家用の権現様でなければ出来ない相談です。

衣のしっぽの部分には、尖った木製の刀(剣)がつけられています。
斜め横から

斜め横から・・・

髪の毛は和紙をびっしり束ねたものになっていて、厚さが5センチほどあります。頭の高さは約22センチ位、あごの付け根の幅が30センチほどあります。

金色に塗られた歯の幅が22センチ、鼻の高さが16センチほどあります。そして、衣の幕を入れた重さが3.5kgほどになります。

画像でははっきりしませんが、小さな耳が麻糸でぶら下がっています。頭を動かすと耳がぶつかり、からんからんと音がします。

口を開くと 口を開くと・・・

はっきりわからないと思いますが、下あごの部分にひもが付いています。右手で頭を持ち、左手で下あごのひもを持って動かしますと、「かたかた」と歯を噛み鳴らす事ができます。

思いっきり口を開けた状態です。ケヤキか栗の固い木部をくりぬき、頭の下がほぼ空洞になっています。

その中に支える横木が二本あり、下の方のつかむ部分の角が取れて丸くなっていました。下の横木の両側に耳が下がっています。

正面から 正面から・・・

この姿で、先祖が手に入れ家の座敷で睨みつけてきました。

昼間なら何も感じませんが、暗闇で突然目にすると「ぎくり」とするこの表情です。

可哀想だったなあと今にして思うのですが、権現様は必ず神社の神前で魂を入れて、悪魔払いや五穀豊穣を祈る為に舞うのです。

我が家の権現様は、今回の稲瀬芸能まつりで魂を入れてもらい、自治会の守り神の仲間になり良かったなあと思っています。

おわりに・・・

私にとって、権現様(獅子頭)をこのような形で自由なアングルから撮影出来る機会は今回が最後になりました。この三コマの画像も、撮影したのは2007年12月31日のことですからかなり以前のことになります。私が子どもの頃から見て畏怖感を抱いていた先祖伝来の権現様、11月のことでしたが地域の自治会神楽クラブに寄贈しました。決まった場所において埃をかぶり汚れていくよりは、集落の皆さんの目に触れ活用して頂くことが権現様本来のねらいにかなうと判断したからです。

・・・ある方に踊らせないと暴れるよと言われ、地域の神事に貸し出したこともありました。そのときですが、古くなった幕(衣の部分)を新調していただきました・・・。そんなこともあり手放しました。きっと先祖も私の判断を支持してくれるものと確信しています。


純農村である私の住む集落では、年に一回、一同が集落会館に集まり、悪魔払い、家内安全、火災予防、五穀豊穣と先祖供養をしています。歴史をひもとくと、集落の権現舞は発祥を早池峰神楽・大償神楽弟子神楽である土沢神楽から伝授された佐野向神楽に繋がっていくようです。

当地区では佐野向神楽を師匠とし、7地区に伝承されています。秋の芸能祭りでは、地域内の8団体が創作した権現舞群舞が披露されています。威厳と畏怖感に満ちた権現様ですが、地域の集落内に愛される存在になって欲しいと祈念します。

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