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      岩手山麓土地改良区・円筒分水工


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目の前に大きく広がる円筒分水工です。背景に北上山地の姫神山を配置しました。
岩手山麓土地改良区・円筒分水工・・・

奥州市胆沢区徳水園の通水式を見てから、円筒分水工を利用しての灌漑用水に関心を持った私です。ネットの世界を見ると、色々な分野の事象に対し詳細に調査をされてサイトを構成している場面に出くわします。そんな中に、全国に分布する円筒分水工を紹介しているサイトがあります。

・・・円筒分水データーベース、インターネットを利用して管理人がとりまとめてものをベースに、諸兄からお寄せ頂いた情報を加えて作成したものです。所在地、名称などの表記に誤りや重複などが含まれる場合があります。また、この表に記載された以外にも各地に存在すると考えられます。

円筒分水に関する情報をお寄せください。適宜、修正・追加いたします。なお、管理人が訪れた円筒分水はリンクが付いています。これらは、カルテ方式でとりまとめた資料をご覧いただけます。・・・

と言う書き出しで最初が北海道夕張郡栗山町から始まり、最後が大分県豊後大野市で終了しています。私もこのサイトを拝見し、岩手の奥州市に沢山の円筒分水工があることを知りました。


トップの画像は目の前に大きく広がる円筒分水工です。背景に北上山地の姫神山を配置しました。姫神山の右側に広がる岩洞湖からの水が、暗渠パイプラインで目の前に来ていますという説明に驚きました。


円筒分水データーベースサイトを見て更に訪れようと思ったのが、滝沢駅前にある岩手山麓土地改良区・円筒分水工でした。盛岡市に出かけた帰り滝沢市駅西側まで訪れてみました。ガイドにしたサイトの記事にもありましたが、場所の特定がかなり困難で肝心の事務所等も見つかりません。ナビを利用して近くまでは行けたのですが、建物には表示等が無く分かりませんでした。

小中学生の学習見学が多いとのことで、10ページにもなる丁寧な資料が作成され参観者に配布されていました。私も頂いた資料からこのページに転記して紹介しています。                                  


分水工までの道 1 周囲は建物が多く、なかなか見つかりませんでしたが立て札を発見。最初に見た事務所の場所とはかなり離れた場所にありました。
分水工までの道 2 案内通りに走ったら行き留まりのフェンスでストップ。見上げる高さに円筒分水工のコンクリートがありますが、中には立ち入りできません。土地改良区の事務所はここではないようです。

携帯で連絡を取ったら見学は自由とのこと、長靴姿の若い男性が来られてフェンスの中に入りました。ここで色々説明を受け、円筒分水工の側まで進みました。

下の左画像は、円筒分水工のコンクリートと立て看板、右側はその拡大です。みどり(水土里)ネットのタイトルで、大きな看板が立っていました。
円筒分水工のコンクリートと立て看板 看板の拡大
遙か岩手山を望む 看板の立つ場所からは遠くに岩手山が見えており、晴れていれば下の水田に水鏡で映るようです。

この場所からは見えないのですが、水田の下に暗渠の水路パイプが通っていると言います。

水源からの用水路 1 水源からの用水路・・・

・・この水路の水は岩洞ダムから来ています。ここまでほとんど暗渠パイプラインで、サイフォンを利用しているのでモーター等は一切使用していません・・、係の方の説明に驚くばかりでした。

巨大な円筒分水工が目の前にあり、コンクリートの高さが目線以下であり迫力満点でした。

全直径が24mあり、サイフォン水路から水が出てくる場所の直径が20m、高さが2.5mあります。ここから二方向へ分水されます。
水源からの用水路 2 水源からの用水路 3

北側から見る 1 北側から見る・・・

円筒分水工の周りを歩き、南側に分水される水門を見ました。南側の水門は、南部主幹線用水路であり、水田面積1,326ha、利用農家は1,512戸となっています。

下の画像は、水門の様子を場所を変えて撮影しました。
北側から見る 2 北側から見る 3

南側から見る 1 西側から見る・・・

目の前に満々と水が流れ迫力がありますが、その割には流れ落ちる時の水温が静かです。周囲の住宅に、騒音にならないような配慮があるのでしょう。

下の左側画像は北側の水門であり、右側の画像は南側の水門です。
南側から見る 2 南側から見る 3

北側を見る 1 北側を見る・・・

北側の水門は、北部主幹線用水路であり、水田面積約521ha、利用農家は322戸となっています
北側を見る 2 円筒分水工南端から眺めた様子です。あまりにも近い場所なので画面に入りきれません。それにしても静かです。


頂いた膨大な資料から、その一部を抜粋で紹介いたします。

◎農業用水

お米を作るにはたくさんの水をつかいます。田んぼが多ければ多いほど水はたくさん必要となります。しかし田んぼを作ろうとした当時、滝沢村周辺には米作りに適した水源(大きなダムやため池、川など)がありませんでした。

というのはその当時、北上川は上流にある鉱山の影響で水が汚染されていたので米作りには使えませんでした。それに、滝沢村の土地より低い場所を流れているので、機械を使わなければ田んぼまで水は引けません。お米を育てている間中ずっと機械を動かし続けるにはお金がたくさんかかるため、大きな負担となります。

お米造りに適したきれいな水、そして機械を使わずに水を引ける、それが岩洞湖でした。

◎円筒分水工と用水路

農業用水路は、水源である岩洞ダムからはほとんどトンネル(14.8km)で通っていて、途中で岩手県の水力発電所で発電してから運ばれてきます。そして北部主幹線用水路(12.3km)と南部主幹用水路(20.2km)とに分水するために作られたのが円筒分水工で、直径が24mと国内でも最大級の大きさです。

昭和37年(1962年)に作られたこの円筒分水工の特徴は、岩洞ダムから流れてくる水の量を調節することなく、北部主幹用水路に30%、南部主幹用水路に70%と、田んぼの面積を考えて一定の割合で流れるように作られました。しかし現在では地域が発展して田んぼの面積が大きく変わったため、水門を作り、流れる量を調節しなければならなくなりました。


◎岩洞用水路の仕組み

農業用水路は岩洞湖から分水工までの間に、山を下って北上川を渡りまた山を昇るところがあります。水は高いところから低いところに流れるので、このままだと水は自然に流れることができません。しかし、この山の高低差を利用することによって水を自然に流すことができるのです。

これは、サイフォンの原理と言い土地の高低差だけを利用して、水はポンプや機械などの動力をまったく使わず用水路を流れています。

※頂いた資料、岩手山麓土地改良区(みどりネット岩手山麓)から抜粋転記。


昔の米作りのための水利用は、オーバーな言い方をすると命をかけた用水争奪戦の歴史の繰り返しであったと言えます。私たちの命を支える米・稲の生長に関して、あたり当たり前になりかけている私たちですが、水争いが各所で見られたことも忘れてはならない先人の歴史がありますので取り上げてみました。

                                       2014.05.23 撮影、 2014.06.23 作成

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