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      2008奥州市黒石寺・蘇民祭・柴燈木登り


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23時30分、鐘の音で柴燈木登りの儀式が始まった。しかし、それらしい姿がなかなか見えてこない。参道の階段付近は動きのとれないほどの人出になっている。庫裏の方を見ると、腰を屈めて棒を手にした世話人・親方衆が地面の上を横に払いながら、「イヨーイヨー」の掛け声で入ってくる。

これは地面を祓い清めるのだという。時には向かい合った二人が、あたかも刀を交えるような仕草でかちんかちんとぶつけ合う。静かな動作だが、凄く気合いのこもった一瞬である。こうして柴燈木を組む場所が清められる。
庫裏から出て通路を清める世話人・親方衆 1 庫裏から出て通路を清める世話人・親方衆 2 庫裏から出て通路を清める世話人・親方衆 3・・・祓い棒をぶつけ合う世話人。

本堂下の境内に柴燈木を井桁に組む作業が始まります。今まで見てきた蘇民祭では、井桁の木組みは事前に組まれていることが多いのですが、黒石寺では地面の上に土台になる松の木を並べるところから始まります。太い松の木の間には、柴、たき付け、ごま殻等が組み込まれ、その上に交互に松の木を並べていきます。

注意して見ていますと、細心の注意を払って組まれていることに気がつきます。何しろ上に人が登り動き回るのですから、がっちりと組まれないと危険です。しかし、世話人・檀家親方衆の長年の経験が生かされ、高さ2m程の井桁の木組みが二カ所に積み重ねらrれます。
木組みに要する時間はおよそ30分ほどですが、終了すると火が入れられ煙が出てきます。

井桁に組む作業 1 井桁に組む作業 2 井桁に組む作業 3・・・木の間に柴やごま殻が組まれます。
井桁に組む作業 4・・・交互に半分に割った松の木が組まれていきます。 井桁に組む作業 5・・・2m程に組まれてほぼ完成です。 井桁に組む作業 6・・・上がっていいぞーの声が掛かります。


午前0:15頃、いよいよ柴燈木登りが始まりました。周囲にいた裸の男衆が手を引かれながら上に登ります。点火直後は良いのですが、やがて煙がもうもうと立ち上ってきます。最初に裸参りで見た小学生が上に登っていました。父親と一緒なのでしょうが、煙が出立ちこめる前に降りていきました。

松の生木ですから凄い煙が出ますが、周囲の人も煙を吸い込みむせるくらいです。また、風向きによって男衆が向く方向が違いますので、身動きできない人混みからの撮影にはかなりの制限があります。昨年もそうでしたが、井桁に組む木組みを撮影するには参道階段が良いのですが、男衆はどちらかというと本堂よりも庫裏の方を向くことが多いようでした。ここら辺の判断はかなり難しいところです。

角灯や祓い棒を手にして「ジャッソー・ジョヤサ」と気勢を上げる男衆、上を向いて声高らかに「山内節」を歌う男衆、しばし周囲の人は逞しい男性美に見とれています。
柴燈木に登る男衆 1 柴燈木に登る男衆 2 柴燈木から降りる小学生 1
柴燈木から降りる小学生 2・・・世話人が何か語りかけています。 柴燈木上で気勢を上げる男衆 1 柴燈木上で気勢を上げる男衆 2
柴燈木上で気勢を上げる男衆 3  柴燈木上で気勢を上げる男衆 4 柴燈木上で気勢を上げる男衆 5

もの凄い煙の中で気勢を上げる男衆です。しゃがんだ姿勢で「ジャッソー・ジョヤサ」と叫ぶ男衆はあまり見られませんでした。本当に煙との戦いです。
煙の中で気勢を上げる男衆 1 煙の中で気勢を上げる男衆 2・・・しゃがみ込む男衆はあまりいません。 煙の中で気勢を上げる男衆 3

ここでは縦位置での男衆を紹介します。まだまだ火の勢いが強くなく炎までは見えていません。やがて火勢が強くなり、男衆は次々と降りて最後は巨大な火の柱と化していく柴燈木です。
気勢を上げる男衆と見守る親方衆 煙の中で気勢を上げる男衆 1 上がれーと手をのべる男衆
柴燈木の周囲は登らなかった男衆が取り囲んでいます。 ジャッソー・ジョヤサの声が聞こえそうです。 煙との戦い、どこまで耐えられるかここからが見せ所になります。

今回の撮影は、柴燈木登りの場面で打ち切りです。メインになる蘇民袋争奪戦まで現場にいたかったのですが、吹雪の中で身の置き場所が無くなり家に帰りました。こんな弱気を出しては、裸で参加している男衆には申し訳ないのですが仕方ありませんでした。来年の課題は、別当登りから最後の蘇民袋争奪戦迄を撮影することです。

今年は何かとポスター騒動で事前の大騒ぎがあり、蘇民祭当日の人出と混雑が喧伝されていました。しかし、私が見た限りでは、厳しい事前の通達があったとは言え全裸姿の男衆は見ませんでしたし、蘇民祭の儀式は整然と行われていました。昨年は全裸の方が数人おり、偶然ですが私もその様子を撮影していました。翌日のテレビ報道を見ていて気がつきましたが、親方が蘇民袋を切るときは全裸なのですが、「ライトを消せー」の掛け声があり取材用のライトが一斉に消されていました。

最後の画像は今回のお気に入り画像です。もの凄い煙の中で咳き込みながら立つ男衆・素晴らしい肉体美の男衆が「ジャッソー・ジョヤサ」と叫んでいる姿からは、本堂に祀られている四天王の仏像を連想させます。また、目を閉じて静かに山内節を歌う男衆からは、千年も受け継がれてきた伝統の重みを感じます。

深夜の柴燈木登りの時、吹雪の中に時折上弦の月が見え夜空に輝く星も見えた。昨年も同じように月を見たが、燃え上がる炎に身体をかざし仰ぎ見る月は殊更に冷え込みの厳しさを感じる。身体を休ませる場所もなく立ちっぱなしで見ていると、昔の人々の祈りにも似た気持ちが分かるような気がしてくる。五穀豊穣、家内安全、病気平癒等々・・、今も昔も祈る人々の気持ちに変わりはない。その原点になるのが厳冬期に行われる蘇民祭である。そんなことを想いながら、千年前の様子に想いを巡らせた。

友人Nさんから頂いたメールの一部を紹介し、今年の黒石寺蘇民祭のまとめにしたいと思います。
今回の件は、話題ばかり先行して、お祭りの本来の目的はどこに行ってしまったの?とも思います。もしかしたら、地元の方はこんなことで話題になるなんて恥ずかしいと思われるかもしれません。

ですが、あのポスター制作に携わった方々の意気込みに、拍手とエールを送りたいと思います。当然、あのモデルになった方にも、盛大な拍手です。

煙の中の男衆、その逞しさに四天王を連想させます。 逞しい身体の男衆と山内節を歌う男衆。

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