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           普代村・鵜鳥神楽


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漁業の神様、大漁祈願のために必ず舞われる恵比寿舞。

鵜鳥神楽の概観・・・
岩手県の陸中海岸地方では、今でも新春になると春を告げる神楽が各村々を訪れてくる。この春を告げる神楽のうちでも、宮古市の黒森神楽と、下閉伊郡普代村の鵜鳥神社の権現様を奉持する鵜鳥神楽は、それぞれ北廻り、南廻りと称して、一年おきに三陸の沿岸の村々を回って歩く大きな神楽と言えよう。

鵜鳥神楽は権現様をたずさえて家々をまわり、春祈祷のお札を配り、そして権現舞を舞う。権現様が人々の健康を祝福し、厄を払い、家々の火伏せをし、新しく建った家では柱固めをする。また新仏のいる家や先祖の年忌にあたる家では神楽念仏といって、仏壇の前や墓地で権現舞を依頼されることもある。

この地方の人々にとって神楽が来るのは、「春の訪れ」を知ることだという。神楽は春を告げる芸能なのである。だから人々は神楽が鵜鳥神社を舞い立ったと言ううわさを聞くと、「神楽が舞い立ったから来んべえ」と言って、春を待つように神楽の訪れを待ち望んでいるのである。(※宮古市刊行 陸中沿岸地方の廻り神楽 報告書参照)


タイトルの舞は、沿岸部の人々の大漁祈願に欠かせない恵比寿舞の様子です。何回も恵比寿舞を見ていますが、途中から一般の方を参加させての舞は始めてみました。ユーモラスな仕草とお面の表情から、会場がどっと沸いていたのが印象的でした。

神楽奉納の場で、演目の解説を期待しましたが最初の挨拶だけで詳しいことが分かりませんでした。今回、宮古市教育委員会のご配慮で、『陸中沿岸地方の廻り神楽 報告書』を入手することが出来ました。分厚い資料集を読み、その時の舞を思い出しながら解説文を書いていることをお断りいたします。



5月2日のことですが、普代村鵜鳥(うのとり)神社の例大祭が行われました。私が惹かれたのは、この時奉納される鵜鳥(うのとり)神楽の奉納でした。江刺の家から現地までは軽く200kmを超え、時間も最短コースでも4時間近くかかります。しかし、いまだ観たことのない鵜鳥神楽の魅力に惹かれ出かけてきました。

早池峰神楽の魅力に惹かれ、宮古の黒森神楽を知りました。黒森神楽同様に歴史があり、三陸沿岸部を交互に巡行する鵜鳥神楽を知ったのもその頃でした。何とか鵜鳥神楽を観たいなと思っていたところ、鵜鳥神社例大祭で神楽の奉納があることを知ったことがきっかけです。

この画像は、鵜鳥神楽衆の皆さんが神社入り口にある大鳥居の前で、ほら貝を鳴らしながら太鼓、笛、鉦を打ち鳴らして参道を登ってくるところです。正式な名称は分かりませんが、神楽衆の皆さんが神社の境内に入って来ますので
「お通り」とでも言うのでしょうか・・。江刺の方ではすでに散った桜の花が咲き、天候に恵まれた中で行われた厳粛な瞬間でした。

ほら貝を先頭に、太鼓(胴取り)、笛、手平鉦の順序で厳かな雰囲気で入ってきます。あれれと思ったのは、行列の最後には中学生の男女が続いてきたことです。最後の白髪の男性は貫禄十分で、神楽の雰囲気にはぴったりの方でした。
神楽衆のお通り 1・・・鳥居をくぐる前にここで儀式が行われていました。遠くからなのでよく分かりませんが・・。 神楽衆のお通り 2
神楽衆のお通り 3・・・ホラ貝を吹く方が先頭でした。 神楽衆のお通り 4・・・胴取りのMさんの太鼓。
神楽衆のお通り 5・・・中学生と思われる男女の生徒さんが一緒に歩いていました。 神楽衆のお通り 6


しょしゃ舞・・・

参道を進んできた神楽衆の皆さんは、境内入り口にある鳥居の前で四人が二人ずつ向かい合い「しょしゃ舞」を踊ります。「しょしゃ舞」は黒森神楽でも観ましたが、ここでは権現様は持参していませんでした。手に扇と錫杖持ち、太鼓・笛・手平鉦が奏でる楽に合わせて舞う「しょしゃ舞」は、獅子頭を手にする前に舞う下舞と言われています。

舞手の方々は若い人ですが、鳥居の前に凛とした姿で立ち、軽快な太鼓の音色を奏でる方は「胴取り」のMさんで、今年八十三歳になられる長老です。熟練技とも言えるばちさばきに見とれてしまいます。時間にして5分間ぐらいありました。
しょしゃ舞 1 しょしゃ舞 2 しょしゃ舞 3
しょしゃ舞 4 しょしゃ舞 5 しょしゃ舞 6
しょしゃ舞 7 しょしゃ舞 8 しょしゃ舞 9・・・胴取りのMさん、厳しい表情ですが凛とした姿に熟練技のすばらしさを感じました。
扇と錫杖を持った方の舞が終わると、長老の方二人による刀を使った舞になりました。右手に刀の鍔(つば)と鞘(さや)の部分を握り舞が始まります。ほどなくして右手で柄を握りすらりと刀が抜かれます。刀をぶつけて斬り合うことはないのですが、相手の鞘にかちんと刀をぶつけます。模擬刀ですとのことでしたが、迫力満点の刀舞の様子でした。

その後、右手で刀の刃先を持ち同じ仕草で舞います。昔は真剣を使ったと思われますが、迫力のある舞です。この舞は三分ぐらいで終わりました。
しょしゃ舞 10・・・ここからは長老二人による太刀を使った舞になりました。 しょしゃ舞 11 しょしゃ舞 12
しょしゃ舞 13 しょしゃ舞 14 しょしゃ舞 15
しょしゃ舞 16 しょしゃ舞 17 しょしゃ舞 18

「しょしゃ舞」が終わると、鳥居をくぐり神楽殿まで太鼓・笛・手平鉦を奏でながら進みます。神楽殿に入ると、先ほどまで厳しい表情の胴取りMさんに笑顔が浮かんできます。神楽の舞が始まるまで、待ちこがれている観客の皆さんへ笑顔一杯で語りかけていました。
神楽衆のお通り 7 神楽衆のお通り 8
神楽衆のお通り 9・・・胴取り一人が神楽殿まで進みます。 神楽殿に入りほっとした表情が伺えるのどかな雰囲気でした。


座揃い・・・

10時35分から、神楽の奉納が神楽殿で行われました。今日の役舞(神楽の中の重要な祈祷の舞)が演じられる前に、神楽幕を前にして座揃い(打ち鳴らしとも言う)が行われます。舞台の中は四方が幣束で仕切られ神域になると言います。中央には太鼓を叩く胴取り、左側には手平鉦、右側には笛と手平鉦の皆さんが座ります。この時見た太鼓を叩く長老は、両手にばちを持ち、軽やかなリズムに合わせて体が浮き沈みしていました。

※座揃い(打ち鳴らし)は、神楽の始まりの儀式で、全員が幕を張った舞場に座り神降ろしの歌をうたう。
座揃い 1・・・太鼓を叩く方が変わり打ち鳴らしが始まります。 座揃い 2・・・アクションが大変大きくて、見ている私達も思わず引き込まれるほどでした。
座揃い 3・・・前屈みになりばちに力が入ります。 座揃い 4
主催者の挨拶がありました。

皆さん、今日は遠い所から、また近い所からお出で頂きありがとう御座います。これから3時間位かなと思っております。

今日の演目は、岩戸開き、岩長姫、日本武尊、松迎え、山の神、中入りをしまして恵比寿舞と言う予定で御座います。長時間ですけれどもお付き合い頂ければと思っております。よろしくお願いいたします。

皆さん、この頃風邪があちこちで流行っておりますので、拝殿前のお清め水で手洗いうがいをして、予防に備えて頂きたいと思います。



古の伝え 鵜鳥神楽

例大祭で激しく鮮やかに奉納される鵜鳥神楽は、全国的にも重要な伝統芸能であり、正月から2ヶ月以上かけて沿岸各地を巡業し舞を披露します。平成7年には宮古市の黒森神楽とともに「陸中沿岸地方の廻り神楽」として、「記録作成等の措置を講ずべき無形民族文化財」に選択されました。

舞は「御神楽」「岩長姫」「斐の川」「榊葉」「松迎い」、狂言の「小山の神」、呪舞の「山の神」そして「恵比須舞」「勢剣」
「鬼神笠松山」があります。中でも山の神が降りて厄難の祓いを行う「山の神」の舞は、鵜鳥神楽を代表する舞です。それは、太鼓が鳴り響く中、真っ赤な面を付けた「山の神」が全身のあらゆる筋肉を緊張させ、ひねり、跳ね、回る。まるで指先にまで神が宿っているかのごとく荘厳で勇ましい舞です。

神を崇める舞と、民を楽しませる舞。鵜鳥神楽は神聖な伝統芸能だけでなく、今もなお愛され、地域の人々の生活の中に生き続ける神楽なのです。(※普代村商工会サイトより)

神楽殿での奉納は六演目ありました。私なりにまとめてそれぞれの演目内容を紹介したいなと思います。御覧になりたい演目名か画像をクリックしてお進みください。

今回が初めての鵜鳥神楽の鑑賞と撮影でした。正直の所、自宅から普代村の鵜鳥神社まではかなりの距離があり、ほっづぎ気分では行けない場所になります。今後、機会があったら再度訪れ鑑賞し撮影したいものです。また、黒森神楽と同様に陸中海岸を冬期に廻る神楽でもありますので、釜石以北周辺に巡業したときにでも他の演目を見られたら嬉しいなと思います。
岩戸開き
岩長姫
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日本武尊
松迎
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山の神
恵比寿舞
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